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2006年05月24日

[うつ病(depression),気分障害(Mood Disorder)]

うつ病(depression),気分障害(Mood Disorder)

うつ病(depression)は、医学的診断名で気分障害・感情障害とも呼ばれることのある内因性精神病の一つで、極度の憂鬱感や抑うつ感、無気力、希死念慮などの精神運動抑制を主要症状とする精神疾患である。

うつ病は現代社会における精神障害の中で、最も発症率(生涯有病率)の高い疾患と考えられており、その生涯有病率は約10%前後で推移している。誰もがうつ病を発症するリスクや要因を抱えていて、いつ何がきっかけとなって発病するか分からないことから『心の風邪』と呼ばれることもあるが、実際のうつ病患者の極度の苦悩や圧倒的な絶望感は『心の風邪』と言うには余りに過酷なものである。

高度に経済が発達して人間関係が複雑化した現代社会の生活には、様々な不快な精神的ストレスが充満していて、私たちの精神状態に苦痛や葛藤、悩みを与え続けている情況がある。ストレス過剰な生活環境に長期間置かれることが、うつ病や全般性不安障害、社会不安障害など各種精神疾患の発症リスクを上げていることは確かだが、同じストレス状況に置かれても精神疾患を発症する人としない人がいることから先天的要因や性格傾向なども発症過程に関係していると考えられる。

うつ病の遺伝的素因(うつ病の症状形成につながる体質・気質・性格・認知傾向)を持っている人が、過度の強いストレスや不安に長期間晒されて、それに上手く対処できず環境不適応に陥るとうつ病の発症リスクが格段に上がると考えられる。先天的な各種の素因に環境からのストレスの負荷が加わって精神疾患を発症するという病理モデルを『素因ストレス・モデル』といい、現在の精神医学では最も説得力のある仮説となっている。

職場・学校・家庭・社会における精神的ストレスに適切に対処するストレス・コーピングを向上させ、日常生活でのトラブルを長期的な悩みにつなげない自己肯定的な認知を習得することが大切になってくる。

うつ病を発症の原因別に分類したキールホルツは、『内因性(遺伝・気質・器質など内部的原因)・外因性(脳損傷や脳疾患などの外部的原因)・心因性(精神的ショックや喪失体験など心理的原因)』のうつ病を考えた。

現在の精神医学では、抗うつ薬による薬物療法の薬理学的根拠として『脳内モノアミン仮説』が提唱されている。その仮説によると、うつ病患者は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった精神活動を活発化させ意欲を増進させる神経伝達物質(情報伝達物質)が不足していると考えられている。うつ病の生物学的原因として、脳内のセロトニン・ノルアドレナリンの不足による情報伝達過程の障害が推測される。

ニューロン間のセロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害して抑うつ感や億劫感を改善する目的で、三環系・四環系の抗うつ薬、SSRI、SNRIなどの抗うつ薬による薬物療法が行われているが、効果著明なSSRIなどに関して強い副作用の問題が指摘されることもあり、慎重な臨床医学的診断と安全な薬物療法の選択が必要となる。

心理療法としては、過去の生活歴や人間関係を取り上げない認知行動療法・認知療法、支持的療法が効果的であり、内面心理を洞察したり過去の記憶を分析する精神分析はうつ病には余り有効でないと言われている。

うつ病特有の症状としては、『精神運動抑制の精神症状=抑うつ感・憂鬱感・おっくう感・気分の落ち込み・感情の不安定・希死念慮(自殺願望)・自殺企図・無価値感・虚無感・気分の日内変動(朝は気分が落ち込み、夕方からやや改善する症状)』がある。

それ以外のうつ病の主要症状としては、『一般的な精神症状=不安感・焦燥感・イライラ・情緒不安定・罪悪感』『生理的欲求の低下と身体症状=食欲低下・性欲減退・体重減少・疲労感・倦怠感・口渇・胃腸症状・冷え性・熱感』がある。

医学的なうつ病治療は、抗うつ薬・抗不安薬(マイナートランキライザー)・睡眠導入薬による薬物療法が中心だが、薬物療法の効果発現には最低2週間以上の時間を必要とする。また、全てのうつ病に対して薬物療法が奏効するわけではなく、内因性うつ病に対しては一般に良い効果が出やすいが、明確な精神的ストレスや喪失体験、ショック体験を特定できる心因性うつ病では余り効果が見られないことが多いとも言われる。

いずれにしても、十分な休養と安心して生活できる環境を準備して、生きるエネルギーが枯渇した心身をリフレッシュさせる時間を確保することが治療の必要条件となる。

薬物療法は効果と副作用のバランスによって専門医が適切な判断を適時行っていかなければならないが、『薬物療法・十分な休養・周囲の支持・心理療法』を適切に組み合わせて、自殺の危機などを予防する安全性を確保しながら治療を進めていかなければならない。

うつ病の病態経過や患者の個別的特性に合った治療法を、医師(心理臨床家)と患者の共感的な対話を通して選択していくことが重要になってくるだろう。

うつ病になりやすい病前性格としては、『几帳面・生真面目・対人配慮の強さ・秩序志向性・完全主義傾向・義務感や責任感の強さ』などの特性が上げられており、テレンバッハメランコリー親和型性格下田光造執着性格クレッチマー循環気質などの性格理論にまとめられている。

うつ病の臨床医学的な診断基準を知りたい場合には、アメリカ精神医学会によるDSM-WやWHO(世界保健機関)のICD-10などを参照すると良い。



posted by ESDV Words Labo at 00:09 | TrackBack(1) | う:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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