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2011年02月11日

[パーソナル・アイデンティティ(personal identity)とM.マーラーの核心的同一性]

パーソナル・アイデンティティ(personal identity)とM.マーラーの核心的同一性

E.H.エリクソン(E.H.Erikson, 1902-1994)『ライフサイクル論・発達漸成図式(社会的精神発達論)』を提唱して、自我アイデンティティの概念を定義したが、エリクソンは自我アイデンティティを構成する要素として、自分がどのような社会的役割と同一化するかという『社会的アイデンティティ(社会的な役割意識と存在意義の実感))』を重視していた。自我アイデンティティとは、過去から現在まで一貫して続いている連続性のある自意識であり、自分がどのような人間(存在)であるのかという自己確認を含む『自己同一性(私は〜であり〜のような役割を果たしているという同一性)』のことである。

自己アイデンティティには、自分が既存社会の中で果たせる職業や役割を見つけ出して同一化するという『社会的アイデンティティ』と、自分が自分以外の何ものでもない唯一の存在であり他者の人生と代替不可能であるという『実存的アイデンティティ』の二つの要素がある。

女性分析家マーガレット・マーラーは、母親と乳幼児の間に成立する愛着(アタッチメント)を基盤において『分離‐固体化期』の早期発達論を考案したが、M.マーラーは自己アイデンティティを『核心的同一性(コアアイデンティティ)』『職業的同一性』の二元論で解釈していた。『核心的同一性(core identity)』というのは発達早期の母子関係からの分離を通して、段階的に形成されていく『自分は自分である・自分は自分以外の何ものでもない唯一の存在である』という自己意識の実感のことである。

職業的同一性というのは『社会的アイデンティティ』とほぼ同一の概念であり、職業活動を通して何らかの社会的役割を果たしているという実感を得て、企業・官庁・社会などへの一定の帰属意識を形成することを意味している。プラグマティズムの哲学者としても知られるアメリカの代表的な心理学者ウィリアム・ジェームズ(William James, 1842-1910)は、1891年の『心理学』の著作の中で『妻への手紙』を紹介しており、その手紙において『これこそが真実の私である』という人格的同一性感(sense of personal identity)について言及している。

M.マーラーは核心的同一性と職業的同一性の中間的性格を持つ自己アイデンティティとして、『パーソナル・アイデンティティ(personal identity)』を上げており、その特徴として以下の3つの点を指摘している。

1.斉一性……自分も他人も、他者の人生と交換することができない『唯一無二』の存在であり独自の同一性を持っているという実感。

2.連続性……過去の自分と現在の自分が連続して一貫性を持っており、同じ人間であるという実感。

3.帰属性……自分が何らかの『集団・役割(活動)・職業・人間関係』などに対して帰属意識を持っているということ。

posted by ESDV Words Labo at 13:44 | TrackBack(0) | は:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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