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2011年03月01日

[パーソン・センタード・アプローチ(PCA)と来談者中心療法]

パーソン・センタード・アプローチ(PCA)と来談者中心療法

徹底的な傾聴と共感的な理解、無条件の肯定的受容を基盤に置く来談者中心療法(クライエント中心療法)を開発したのは、アメリカの臨床心理学者のカール・R・ロジャーズ(1902-1987)である。1970〜1980年代において、非指示的・非審判的なクライエント中心療法がカウンセリングの主流の技法としての地位を確立したが、現在では指示的要素を持つ認知療法・認知行動療法の勢力が増している。その結果、C.R.ロジャーズのクライエント中心療法は、クライエント(依頼者)と向き合う時に、ラポールを構築して自己受容を促進させるための『カウンセラーの基本的態度』としての意味合いが強くなっている。

クライエント中心療法のカウンセラーの教育方法(スーパービジョン)に、集団的トレーニング法としての『ベーシック・エンカウンターグループ』という方法論があるが、これは率直な他者との出会い及び本音の交流を通して『人格的・双方向的な成長』を図ろうとするものである。C.R.ロジャーズのクライエント中心療法や有機体理論(実現傾向の理論)は、心理学の第三勢力とされる『人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)』に分類されるが、1960年代には人間性の向上や相互理解の深化を目的とするベーシック・エンカウンターグループが流行した。

1970年代に入ると、C.R.ロジャーズはクライエント中心療法を応用したコミュニティ形成に関心を持ち始め、主義主張・思想信条・価値観・文化伝統・人種民族などが異なる人たちでも、エンカウンターの集団カウンセリング技法を用いれば、その差異を超えて相互理解と人格の成長ができると考えた。ロジャーズはあらゆる属性上の差異や能力上の高低を乗り超えて、相互尊重と切磋琢磨(人格向上)をし合うコミュニティを作れると主張し、そのための人間性尊重の積極的アプローチを『パーソン・センタード・アプローチ(Person Centered Approach:PCA)』と呼んだのである。

パーソン・センタード・アプローチのワークショップを精力的に行い始めたロジャーズは、クライエント・センタード療法もパーソン・センタード療法と呼ぶようになり、『国際的な差異・対立の問題の解消』という極めて大きな問題に対峙する思想性と国際感覚を持つようになる。1970年代以降のC.R.ロジャーズは、南アフリカのアパルトヘイトや米ソの冷戦構造、中南米の政情不安、核兵器の増産などカウンセリングの枠組みを超えた『世界的な問題』に強い関心を寄せて、それらの世界的問題にパーソン・センタードアプローチによる改善を持ち込もうとした。

この世界平和や人種差別撤廃を目的とする企図壮大な試みは、必ずしも成功したとは言えないが、パーソン・センタードアプローチによる世界問題への対応の具体的成果としては、『南アフリカのアパルトヘイト問題へのエンカウンター導入・アメリカとソ連の専門家間の対話・中南米の政治経済問題を話し合うための各国代表者を集めたワークショップ』などを挙げることができる。

posted by ESDV Words Labo at 07:32 | TrackBack(0) | は:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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