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2011年03月01日

[オペラント条件づけの『罰(punishment)』の効果と限界]

オペラント条件づけの『罰(punishment)』の効果と限界

徹底的行動主義の心理学者であるB.F.スキナー(Burrhus Frederick Skinner, 1904-1990)は、『スキナー箱』を用いたラットの実験から『報酬と罰』によるオペラント条件づけの原理を確認した。オペラント条件づけ(道具的条件づけ)は『飴と鞭の考え方』を理論化したものとも言われるが、『正の強化子(快的な刺激)』を与えると行動の生起頻度が増え、『負の強化子(不快な刺激)』を与えると行動の生起頻度が減るという条件づけのことである。

正の強化子とは『報酬(reward)』であり、負の強化子とは『罰(punishment)』であるが、オペラント条件づけにおける罰とは『苦痛・叱責・非難などの不快な刺激』を与えるだけのことではなく、『それを受けることによって行動の生起頻度が減る』と合理的に予測可能な刺激のことなのである。罰にはその与え方によって、『直接的罰則』『間接的罰則』の二つを想定することができる。

『直接的罰則』の代表的なものとしては、喫煙者がタバコを吸う度に喫煙室に臭気ガスを充満させるとか、夜尿症でお漏らしをする度に軽度の電気ショックあるいはブザーを鳴らすとか、アルコールを飲むと気分が悪くなって吐き気が生じる抗酒薬を与えるとかいうものがある。それらの罰則は、直接的な苦痛や不快をもたらすことで不適応行動の頻度を減らすのである。

『間接的罰則』の代表的なものとしては、会社に遅刻した人の給料を一定額差し引くレスポンス・コスト法、掃除当番をさぼった生徒に対して教室の掃除だけではなくてトイレ掃除までも言いつけるオーバーコレクション法などがある。それらの罰則は、間接的な損失を生み出したり面倒な事柄を強制したりすることで不適応行動の頻度を減らすのである。

ある人の好ましくない不適応行動を減少させるために、負の強化子(罰)を用いようとする時には、事前に『〜の行動や失敗をした時にはこういった罰則を与えます』といった契約を取り結んでおく必要があるが、それは倫理的理由だけではなくて実際の罰の効果にも影響してくるからである(事前説明があったほうが罰による不適応行動の減少が起こりやすくなる)。しかし、『罰』を与えて行動を改善させようとすることの限界は、罰の効果が一時的なものであり、その罰が与えられなくなると再び不適応行動の生起頻度が上昇するということにある。

相手がまだ小さくて精神発達が未熟な幼児・児童の場合には、罰(注意・ペナルティ)を与えることが『自分への注目・関心』として受け取られることも多く、そうなると好ましくない不適応行動の発生頻度を低下させることができなくなる。大人に注意されたり叱責されてもその非行行動をやめる気配のない非行少年などにも、『罰を自分への注目・関心として受取りやすい(罰という負の強化でもいいので注目されたいという愛情飢餓感)』という認知の歪みが見られることがある。

罰の効果の限界としては『効果の一時性・罰と注目の混同・罰を与える人の敵意や恨み・精神的ストレスや恐怖感の強さ』といったものを挙げることができるが、罰による行動変化の限界の典型としては『望ましい理想的な行動・反応を教える効果がない』ということがある。即ち、子どもの教育目的やカウンセリングによる行動修正などと照らし合わせると、悪い行動に対して『罰』を与えるだけではなくて、望ましい行動に対して『報酬』を与えていくことが極めて重要なのである。

posted by ESDV Words Labo at 07:34 | TrackBack(0) | お:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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