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2011年04月17日

[広汎性発達障害(PDD)と自閉症スペクトラム・アスペルガー障害:1]

広汎性発達障害(PDD)と自閉症スペクトラム・アスペルガー障害:1

前回の記事では、発達障害の定義と種類を説明したが、ここでは広汎性発達障害の症状と問題について整理したい。広汎性発達障害(PDD:Pervasive developmental disorder)の典型的な状態像として、『自閉症スペクトラム』がある。自閉症スペクトラムというのは『自閉症的な症状・特徴・重症度』に連続的で段階的な幅の広がりがあって、健常者〜重症自閉症までの境界線が明確ではないという事である。

スペクトラム(spectrum)というのは『連続体・多様性』という意味であり、国際疾病分類のICD-10では広汎性発達障害を『相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンにおける質的障害、および限局した常同的で反復的な関心と活動の幅によって特徴づけられる一群の障害』として定義している。

児童精神科医のレオ・カナーが1943年に報告した自閉症(Autism)は自閉性障害(Autistic Disorders)とも呼ばれるが、集団生活に適応するための社会性の障害や他者と意思疎通・感情交流をするためのコミュニケーション能力の障害、常同行為(こだわり行動)を繰り返すイマジネーションの障害などの特徴を持っている。レオ・カナーが発見した『カナー型自閉症(早期幼児自閉症)』は知的障害を伴う低機能自閉症であり、他人に対する興味関心が極端に乏しく、自己の内的世界に閉じこもって他者との情緒的交流が難しいという問題があり、言葉の遅れ(言語機能の低さ)や心の理論の障害(他人の気持ちを推測できない)などの問題が見られた。

自閉症の症状には『言語の発達の遅れ・感情的交流や意思伝達の困難・相手の内面や立場を推測できない(心の理論の障害)・反復的な常同行動・行動様式や興味の対象が極端に狭い・極度の自己中心的思考・被害妄想』などがある。他人と目を合わして話すことが出来なかったり、場面に相応しい表情や態度を取れなかったりすることで(怒られているのに笑っているなど)、社会性(集団適応性)の獲得が困難になり、発達年齢に応じた友人関係を作ることも難しくなってしまう。

言語能力の発達に遅れがあったり、他人の言葉をそのままオウム返しするだけのエコラリアが見られたり、興味関心の範囲が極端に限定されていて、気に入ったこだわり行動(常同行動)をいつまでも繰り返したりする。特定の音、光、匂い、触覚などに対する感覚過敏性が見られることがあるが、一般的に音を耳で聴く聴覚よりも目で見る視覚のほうが発達しているので、その『視覚優位性』が特別支援教育でも利用されている。自閉症児に『注意・指示』を与える場合には、紙などに文字・イラストを書いて見せると効果があるとされているが、知的障害・言葉の遅れが見られない『高機能自閉症・アスペルガー障害』では、言葉で話しかけたほうが注意・指示の意味が伝わりやすいこともある。

『自閉症・アスペルガー障害』において、対人関係やコミュニケーションの障害が深刻になりやすいのは、『心の理論』と呼ばれる自他の相互性や感情・意図を理解するための精神機能が障害されているからだと考えられている。『心の理論』とは、自己と他者をきちんと区別して、相手の立場や感情、意図を状況に見合った形で適切に推測できる精神機能であるが、自閉症スペクトラムにある人はこの心の理論が障害されているので、『他者の感情・意図』を上手く推測することができず、その場面でその相手に言うべきではないことを無神経に言ってしまいやすいなどの問題が出てくる。

人間関係の相互性を理解することが難しいので、会話の内容やその場の雰囲気を察して、適切な応答をすることができなかったりする。ユーモアや冗談、軽口のニュアンスも理解することが出来ないので、冗談で言ったことを真に受けてしまって怒ったり恨んだりするようなことがあり、『言葉を額面通りに受け取る・そのままの文章として理解しようとする』などの問題が指摘される。周囲の空気を読んで自分を合わせたり、『言外の意味』を暗黙の了解で察知したりといったイマジネーション(想像力)を働かせることができないので、相互的な対人関係に上手く適応できないといったコミュニケーションの障害が起こりやすいのである。

それ以外にも、自閉症には『時間概念の形成不全・時間への強迫的なこだわり』といった問題があり、時間の概念が理解できない自閉症児がいる一方で、『一分一秒のズレ』も看過できずに決められた時間通りにパターン化された行動を取ろうとする強迫観念・強迫行為が見られることもある。

自閉症児は『習慣的・定型的な行動パターン(決まりきった繰り返される行動パターン)』に対する強いこだわりを持っていることが多く、『未経験の事柄・予想外の状況・急な予定の変更・こだわり行動の抑止』などに対して適切な反応ができず、パニック状態になって奇声を発したり暴れてしまうこともある。その背景には『ストレス耐性・フラストレーション耐性の低さ』といった生物学的条件が関係しているが、自閉症の日常生活ではその子どもが重視している『習慣的・定型的な行動パターン』や『こだわり行動(常同行動)』に対しての配慮も必要になってくる。



posted by ESDV Words Labo at 23:31 | TrackBack(0) | こ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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