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2011年05月02日

[発達性失語症(developmental dysphasia)・ことばの遅れ]

発達性失語症(developmental dysphasia)・ことばの遅れ

失語症(aphasia)は、高次脳機能障害によって言葉を話したり理解したりする機能を失う後天的な障害であるが、発達性失語症(developmental dysphasia)というのは、発達過程によって獲得されるべき言語機能が獲得できないという先天的要因の関与する障害である。いったん獲得した言語機能(話す・聴く・読む・書く)を喪失したり低下させたりする失語症(aphasia)は、成人期(青年期)以降の事故や病気による高次脳機能障害によって発症しやすい障害であり、幼少期から症状が見られる発達性失語症とは異なる。

成人期に起こる代表的な後天性の失語症には、運動性言語中枢(ブローカー野)が障害されて言葉が話せなくなる『ブローカー失語症』と聴覚性言語中枢(ウェルニッケ野)が障害されて言葉を聴いて理解することができなくなる『ウェルニッケ失語症』とがある。発達性失語症とは日常的な表現で言えば『言葉の遅れ・言葉の習得困難の問題』であり、成人期の失語症のように一度獲得した言葉の機能を失うのではなく、初めから言語機能を習得できないという問題なのである。

発達性失語症では、初めから全く言葉を話すことができなかったり、何とか一語の単語だけは幾つか覚えられても『意味のある二語文』を話すことはできなかったりする。あるいは、相手の話している言葉を何歳になっても全く理解することができなかったり、文字の読み書きの学習が極端に困難だったりといった問題になって表れる。『話す・聴く・読む・書く』の言葉の機能に遅れが見られたり障害が起こったりするケースには、発達障害の一つである学習障害(LD)も含まれているが、発達性失語症のほうは学習障害よりも重度であり、殆どの言葉を理解できず話せないという障害が起こってくる。

精神医学上の診断で重要になってくるのは、『発達性失語症』『知的障害(精神遅滞)・広汎性発達障害(自閉症)・聴覚障害(先天性難聴)』との鑑別診断である。発達性失語症は知能指数が低いために話せないわけではなく、知能指数は人並みであっても脳内の言語中枢に限定された成熟障害(微細脳機能障害)などの要因によって、言葉を話したり理解したりすることが難しくなるのである。

発達性失語症の子どもに、言葉を用いなくて知能を判断できる『非言語性知能検査』を実施すると、平均程度の成績を上げることができ、また社会的状況や他者の行動の理解もできているので、知的障害とは異なる。発達性失語症の子どもは、自閉症とは異なり他者とのコミュニケーション欲求を持っており、相手と目線を合わせるアイコンタクトをしながら身振り手振りのジェスチャーでコミュニケーションを取ることができる。発達性失語症は単純な『聴覚障害』とも異なり、『音声そのもの』は聴こえているが、その内容を理解したり再現して声にすることが難しいとされている。

posted by ESDV Words Labo at 08:54 | TrackBack(0) | は:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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