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2011年05月02日

[発達理論と発達臨床心理学]

発達理論と発達臨床心理学

発達心理学は、人間の誕生から死までの段階的な発達プロセスとその発達課題・適応問題(精神病理)を解明しようとする応用心理学の分野である。具体的な発達段階としては、『胎児期・新生児期(乳児期)・幼児期・児童期・思春期・青年期・成人期・壮年期(中年期)・老年期』などがあり、それぞれの分野に特化した『児童心理学・青年期心理学・老年期心理学』などに分類されることもある。

人間の精神発達過程のメカニズムを仮説概念を用いて示し、発達段階や発達課題、社会適応(対人関係の適応)を説明しようとする理論のことを『発達理論(developmental theory)』と呼ぶが、代表的な発達理論には『演繹的な精神分析系の仮説』『帰納的な行動科学系の仮説』とがある。S.フロイトを始祖とする精神分析系の発達理論は『リビドー発達論(性的精神発達論)』であり、性的快感を知覚する部位が『口唇期→肛門期→男根期→潜伏期→性器期』へと移行するに従って、精神機能が発達して成熟した生産的(生殖的)な異性関係を築けるようになるという仮説になっている。

精神分析の自我構造論をベースにした発達理論では、無意識的な『エス(本能的・動物的な欲求)』が思い通りにならない現実原則によって挫折させられ、エスから分化した意識領域にある『自我』によって現実的な適応や欲望・感情の調整が進められると考える。更に、両親の教育やしつけを内面化した無意識的な『超自我』の倫理観・道徳感情が形成されることで、物事の善悪を判断する精神機能が発達してくることになる。

行動科学や認知理論に基づく発達理論としては、アルバート・バンデューラの『社会的学習理論(観察学習理論)』があるが、これはS-R結合のロールプレイングや強化による学習ではなく、模範的な他者の行動・発言をモデリング(観察・模倣)することによって、精神機能や現実適応の発達が進むという仮説である。ジャン・ピアジェの思考発達論(認知発達論)も、本能的な『感覚・運動期』から象徴的な思考をする『前操作期』を経て、抽象的・論理的な人間特有の思考ができるようになる『操作期(具体的操作期・形式的操作期)』へと段階的に発達していくプロセスを説明した発達理論である。

精神分析のリビドー発達理論では、リビドーが『特定の身体部位』の快感の段階に固着することで、精神発達が停滞してしまい精神疾患が発症しやすくなるという『固着・退行のメカニズム』が示されているが、このように発達心理学を臨床活動・精神病理の理解や治療に応用するような研究分野を『発達臨床心理学』と呼ぶ。

カウンセリングや心理療法といった心理臨床活動に、発達心理学の知見・仮説を応用しなければならない機会は富に増えているが、『発達臨床心理学の目的および効用』は人々の精神的な健康と適応的な発達を促進することにある。また、心理臨床の見立て・予測を行って治療計画(カウンセリング計画)を立てる場合には、クライアントの年齢と発達課題、発達上の問題点を併せて考えていく事が不可欠であり、現在の心理臨床では発達臨床心理学の観点や知見を軽視することはできない。

posted by ESDV Words Labo at 11:52 | TrackBack(0) | は:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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