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2006年06月27日

[因子分析(factor analysis)と因子(factor)による対象特性の要約的説明]

要約的説明を可能にする因子分析(factor analysis)と因子(factor)

質問紙法などの心理検査の作成時には多くの変数を取り扱うが、高い相関関係を持つ変数の背後にある客観的に観察不可能な変数を“因子(factor)”と呼んでいる。この複数の変数に影響を与える因子(共通因子・特殊因子)を、多変量データから推定(抽出)する方法論を“因子分析(factor analysis)”といい、キャッテルの特性因子論を基盤にする性格検査の作成には必須の手続きとなっている。

因子分析は、多変量データから共通因子を抽出する技法であり、各変数や各変量の間にある関係を出来るだけ少数の因子によって説明することを可能にするものである。例えば、診断的な知能検査であるウェクスラー式知能検査(WISC)では、子どもの知的能力を言語性尺度(知識・数唱・単語・算数・理解・類似)の各因子や動作性尺度(絵画完成・絵画配列・積木模様・組み合わせ・符号)の各因子によって説明しようとする。

『性格(人格)・知能・精神病理・環境適応』などの特性を、複数の因子によって説明する為に行う因子分析では、変量相互間の相関係数を計算して『因子の種類・因子の数・因子と変数の関係』などを分析して考察する。

特性因子論の理論内容を見れば分かるように、因子分析の本質は『人間が理解しやすい要約的な説明を可能にする因子を抽出すること』である。人間の性格や知能を構成する要素は膨大無限であり、厳密には心理学領域の心理検査でその要素の全てを測定し尽くすことは困難である。

しかし、相関する複数の要因をまとめてそれらの背後にある因子を抽出することで、人間の性格・知能の特性を大まかに分類して理解する為の因子を明らかにすることが出来る。個人の性格特性や知能特性の大まかな特徴や区別を知る為に、因子分析による特性因子論などは非常に有用な方法論であるといえる。

因子分析によって、各変量と各因子がどれくらいの相関を持っているかを示して因子を特定する『因子負荷量』、因子が各変数の項目をどれくらい説明できるかという『共通性』、因子の説明力を相対的に示す『寄与率』などの数値データを得ることが出来る。

共通性は『共通性の推定』の方法によって算出するが、共通性の推定(ONE法,MAX法,SMC法)にはある程度の恣意性があり、絶対的に正しい数値というものではないが、反復して推定することで精度は高まる。因子負荷量は『因子パターンの推定』によって導き出すが、因子パターンの推定には、繰り返しのない主因子法・主因子法・最小二乗法・重み付き最小二乗法・最尤法など様々な方法があるが、どの計算法が正しいということはなく自分の仮説や主観への適性・精度に基づいて通常、計算法は選ばれる。

因子間の相関関係や負荷の程度を解釈する場合の煩雑さや誤りを回避するために、『回転(直交回転・斜行回転)』という作業が行われる事もある。因子間の相関関係がないものとして行う直交回転にはバリマックス回転があり、因子間の相関関係があるものとして行う斜行回転にはプロマックス回転・斜交プロクラステス回転・直接オブリミンなどがある。



posted by ESDV Words Labo at 07:37 | TrackBack(0) | い:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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