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2006年06月27日

[陰性転移による治療反応(negative therapeutic reaction)・精神分析療法の転移と逆転移]

精神分析療法の転移と逆転移・陰性転移による治療反応(negative therapeutic reaction)

シグムンド・フロイト(S.Freud)が創始した精神分析療法では、精神分析の面接場面で分析者あるいはクライエント(患者)に向けられる強烈な情動・感情の反応を『転移(transference)』という。通常の転移はクライエントから分析家(カウンセラー)へと向けられる陽性・陰性の感情であるが、分析家からクライエントに陽性・陰性の感情を向けてしまう現象を『逆転移(counter transference)』という。

分析家(カウンセラー)は陽性の逆転移感情に流されてクライエントに情愛や性的欲求を向けてはならない。同様に、陰性の逆転移によってクライエントとの面接場面を回避したり嫌悪したりすることのないように自己分析に基づくセルフコントロールを行っていく必要がある。また、クライエントの転移感情に反映される無意識的願望や欲求を、カウンセラーが満たしてあげてはならないとする精神分析の原則を『禁欲原則』という。決められた面接の場所や時間以外にクライエントに会ってはならないとするのも禁欲原則の一つとされている。

転移は、『過去の重要な人物』に向けていた愛情・好意・怒り・憎悪などの情動を、『現在の人間関係』の中で再現することによって無意識的願望を充足させようとする自我防衛機制の一つであり、精神分析的カウンセリングの進行過程でほぼ必然的に起こる現象である。

精神分析の重要な治療機序の一つが、クライエント(患者)の『転移感情の分析と過去の対人関係の受容』であり、熟達した分析家の場合にはクライエントの転移感情と自分の逆転移感情を適切に分析して欲求・情動をコントロールしながら面接を継続していくことになる。防衛機制としての転移が発動されている場合には、大抵、『幼少期や児童期にまで遡る未解決の精神的問題や課題』が残っている。

精神分析では、転移を『エディプス・コンプレックスに基づく葛藤と親子関係の再現』と考えるが、転移を起こしている時には幼児的な退行の防衛機制が見られることが多い。即ち、クライエントがカウンセラーを過去の両親と重ね合わせて見るような退行を起こすことで転移感情が生起することになる。その際には、クライエントの話し方や発現、仕草が幼稚で依存的になっていることが多く、逆転移の場合にも、カウンセラーは普段より未熟で自己中心的な認知や思考をする傾向がある。分析者となるカウンセラーが、心理療法の進展を困難にすることがある逆転移に対して自覚的である為には、面接構造の中で自分の果たす役割と立場をしっかりと認識して、過去の親子関係や感情的な葛藤を既に解決していなければならない。

過去の対人関係や感情体験を再現する転移感情には、恋愛感情・性的欲求・肯定的評価・強烈な好意などを感じる『陽性感情転移』と敵対心・憎悪・怒り・反発心・不快感を感じる『陰性感情転移』がある。どちらの転移感情も、精神分析療法の治療場面を混乱させたり、カウンセラー・クライエントの人間関係を破綻させたりする危険があるが、どちらかといえば陰性感情転移のほうが治療効果を低下させたり、面接の継続を困難にしたりすることが多い。

精神分析の治療機序を混乱させて、治療効果の発現や面接の進展を妨害する陰性感情転移に基づくクライエントの反応を『陰性治療反応(negative therapeutic reaction)』という。フロイトは晩年の『自我とエス(1923)』という著作の中で陰性治療反応について言及していて、『分析を受ける途中に、非常に変わった奇妙な態度を示すクライエントがいて、治療の進行過程が順調であると告げると、彼らは不満で不愉快な表情になり自分の精神状態を悪化させてしまう』といった表現で説明している。自己破滅的な性格特性や無意識的な罪悪感、道徳的マゾヒズムによって陰性治療反応は生じるとされるが、基本的には、自我構造の超自我の機能の過剰や行き過ぎによってこの反応が強まってくる。

精神分析療法が担う主な仕事として、『心理的葛藤を減少させること・成熟した適応的な防衛機制を獲得させること・過去と現在の心理的連続性に基づくアイデンティティの回復・良好な人間関係を作る矯正的な感情経験・治療的退行による過去の問題の清算』などがあるが、精神分析の治療過程と介入技法は複雑なのでその習得と熟練には一定以上の訓練期間やスーパーヴァイズが必要となってくる。



posted by ESDV Words Labo at 09:34 | TrackBack(1) | い:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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逆転移について
Excerpt: 逆転移について過去にミクシで色々と書いたので、今回はそれをまとめてみようと思いま
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Tracked: 2006-07-16 00:09