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2011年05月19日

[パラフレニー(paraphrenia)と妄想症状]

パラフレニー(paraphrenia)と妄想症状

近代精神医学の始祖といわれるドイツの精神科医エミール・クレペリン(Emil Kraepelin, 1856−1926)が発見した統合失調症の一種がパラフレニー(paraphrenia)である。E.クレペリンは最初、早発性痴呆(統合失調症)の妄想型を除いた妄想性痴呆(認知症)をパラフレニーと定義して独立的な疾患にしようとした。だが、W.マイヤーの精神病理学的な異論によって、パラフレニーは統合失調症の下位分類とされるようになった。

パラフレニーとは現在では、20代後半に発症しやすい妄想型統合失調症(paranoid schizophrenia)のことであり、他の統合失調症では副次的症状になる『陽性症状(妄想・幻覚)』が前面に出て中心的な症状を形成するものである。パラフレニーは統合失調症の中では発症頻度が高い類型であるが、情緒的な錯乱・興奮の症状がでにくく、無為・自閉を示す陰性症状も比較的軽いことが多い。そのため、統合失調症としては予後がそれほど悪くないことも多く、妄想体系は残ったとしても『人格崩壊・性格破綻』にまで行き着くことは少ないとされている。

特異的な妄想体系を形成して症状は長期間にわたって続くことが多いが、もっとも多く見られる妄想症状は他人が自分の悪口を言っている、他人が自分に危害を加えようとしているという『被害妄想』である。妄想形成の原因として自分の内面にある欲望・不安・感情などを他人に押し付けて、その人がその感情を持っていると思い込む『投影(projection)』の自我防衛機制が関係していると考えられている。

パラフレニーで発症することのある妄想症状としては『被害妄想』と『誇大妄想・異性に関する恋愛妄想』などが中心的となるが、それ以外にも『関係妄想・注察妄想・貧困妄想・好訴妄想・盗害妄想・ストーカー妄想(追跡されている妄想)』などがパラフレニーの妄想体系の中で強化されることがあるので、その治療に当たっては抗精神病薬とされるメジャートランキライザーが用いられることになる。

posted by ESDV Words Labo at 17:06 | TrackBack(0) | は:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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