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2006年07月09日

[情動解放のアブリアクション(abreaction)と治療的作用をもたらすカタルシス(catharsis effect)]

情動解放のアブリアクション(abreaction)と治療的作用をもたらすカタルシス(catharsis effect)

抑うつ感や不安感という心理的苦悩を緩和して解決に導く為のカウンセリング・心理療法では、普段の日常生活の中で抑圧している『強烈な感情(情動・情緒)』を発散するアサーティブ(自己開示的)なコミュニケーションが重視される。日常の対人関係や生活環境で表現することの出来ないありのままの情動を解放することを『アブリアクション(abreaction)』といい、一定レベル以上の感情解放であるアブリアクションはカウンセリングの面接構造の中で半ば必然的に生起してくる。

情動の解放や感情の表現という意味でのアブリアクションが全く見られない心理面接は、カウンセリング本来の治療効果を発現させることが難しい。クライエント側が、過去の苦痛・不快を再体験したくないために感情を過剰抑圧しているケースでは、直接的に全身から溢れ出してくるような強烈なアブリアクションは起こり難くなっている。カウンセラーとラポール(相互的信頼感)を形成できない場合にはクライエント側に問題があることもあるが、その多くはカウンセラー(心理臨床家)とクライエントの相互的コミュニケーションの阻害やフランクな関係性の停滞によるものである。

クライエント側が、過去の出来事の記憶やその記憶に付随した不安・孤独・恐怖・嫌悪などの感情を率直に話してくれない場合には、カウンセリングの技法やカウンセラーの話術・関係の築き方をまず見直してみることが必要になるだろう。カウンセラーとクライエントの間に、歩み寄りが困難な人格的な相性の悪さがあり、性格的な不一致の程度が激しい場合には、カウンセリングを継続し続けることで心身症状を悪化させたり気分を落ち込ませることもある。

カウンセラーはクライエントの側の欠点・短所ではなく、利点・長所を積極的に見出すようにする面接の組み立て方を工夫しなければならないが、何よりも大事なのは、カウンセラーに胸襟を開いて安心して話せる心理面接の場を作ることである。率直な意見やありのままの感情を表現しても批判されない(否定されない)面接空間の雰囲気を醸成することで、クライエントは余ほどカウンセラーとの性格的相性が悪くない限り段階的に『アブリアクションの言動や自己洞察の報告』を見せるようになる。

心理社会的ストレスによる身体疾患を抱えた責任感・義務感の強い心身症患者に多い『アレキシシミア(失感情言語症)』の症状が見られる場合には、無理やりにクライエントの感情や気持ちを聞きだそうとするのではなく身体の不調や睡眠障害などをとっかかりにして、次第に感情的な問題に接近するようにすると良い。

アブリアクション(情動解放)は、カウンセリングのカタルシス効果(感情浄化・情動排泄によるストレス低減や精神鎮静の効果)を生み出す前提になるものだが、全く同一のものというわけではない。TPO(時・人・場面)を選ばない暴発的で無軌道なアブリアクションは自傷行為に近いものとなる。

相手の態度がむかついたから怒鳴りつける、相手が自分の価値を認めてくれないから泣き喚く、不快な仕事や作業を押し付けられたから無視を決め込むというのでは、一定の責任感によって成り立つ社会生活に適応していくことが出来なくなる。あるいは、一切の抑制や抑圧のないありのままの感情を発散し続ければ、他者・社会からの反発・攻撃を喚起する恐れがある。結果として、本人に深い心身のダメージを与えるものになってしまうこともある。

抑うつ感や気分の落ち込みを緩和して精神をリフレッシュさせるカウンセリングのカタルシス効果は、『率直なありのままの感情をぶつけてもよい状況・時間・相手』を適切に選んで行う場合にのみ得ることが出来る。カタルシスとは、抑圧し鬱積した激しい情動を、言葉や行動にして表出することで浄化(排泄)する行為であり、その結果、心理的緊張が低下してリラックス感や爽快感が得られるのである。

カール・ロジャーズの来談者中心療法(クライエント中心療法)のような支持的な心理面接というのは、対等な権利を持つ個人が自由にコミュニケーションを取る社会生活の場とは異質なものである。あらかじめ入念に準備された専門的な心理カウンセリングの面接構造では、ある程度の逸脱行動や退行的な振る舞いが許される特殊な語り合いの場の特徴を持つ。

アリストテレス(Aristotle, B.C.384-B.C.322)

古代ギリシャの哲学者。プラトンの弟子。アレクサンドロス大王の師。アテネ郊外に学園リュケイオンを創設。その学徒は逍遥(ペリパトス)学派と呼ばれる。

プラトンのイデア論を批判し、形相(エイドス)は現実の個物において内在・実現されるとし、あらゆる存在を説明する古代で最大の学的体系を立てた。

中世スコラ哲学をはじめ、後世の学問への影響は大きい。主な著作に、後世「オルガノン」と総称される論理学関係の諸著書、自然学関係の「動物誌」「自然学」、存在自体を問う「形而上学」、実践学に関する「ニコマコス倫理学」「政治学」、カタルシスを説く「詩学」などがある。

大辞林の解説より


カタルシスの原義は、中世教学の礎を築き、万学の祖といわれるほど博識多才を誇った哲学者アリストテレス(B.C.384-B.C.322)の著書『詩学』にある。古代ギリシア世界の貴族や民衆は、アイスキュロスソフォクレスエウリピデスといったギリシア悲劇を観賞して深い感動を味わうことで、日常生活の中で溜め込んだマイナスの不快な情動(悲哀・苦悩・抑うつ・怒り)を浄化する清冽な爽快感を得たのである。



posted by ESDV Words Labo at 20:52 | TrackBack(1) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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信頼関係について
Excerpt: これもミクシの中で書いたもので、それをまとめてみました。 心理療法の中での話しで
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Tracked: 2006-07-18 01:00