ハロー効果(halo effect)・ハローエラー
ハロー効果(halo effect)とは、人(事物)を評価する時に、ある特徴的な目立つ一面だけに影響されて、その他の側面に対しても同じように評価してしまう認知的バイアスの効果のことである。『ある特定の項目での目立つ評価が、他の評価項目にも影響すること』というのがハロー効果の定義となる。ハローとは聖像・仏像の背後で光が差している『後光・光背』という意味であり、ハロー効果は『後光効果・光背効果』と呼ばれることがある。背後にあるまばゆい光に意識が捕われて、正確な認知や判断が下しにくくなり、その後光によって全体の価値を単純に判断してしまう認知バイアスが生まれるという意味である。
行動主義心理学の連合学習実験で、猫を使って『試行錯誤実験』を行ったE.L.ソーンダイク(Edward L. Thorndike, 1874-1949)が、軍隊内部の人事評価(上官の部下に対する認知バイアスのかかった評価)を参照したハロー効果の実証実験を行っている。ハロー効果には、顕著な目立つ特徴が良いイメージ・印象と関係している時の『ポジティブ・ハロー効果』と顕著な目立つ特徴が悪いイメージ・印象と関係している時の『ネガティブ・ハロー効果』とがある。
顕著な目立つ特徴として認識されやすいものには、『外見・学歴・職業・地位・衣服(高級品)』などがある。外見が美しかったりカッコよかったりすると、知性も優れていて性格も良いと判断されやすくなるのがポジティブ・ハロー効果である。東大・京大など高学歴者であると、ポジティブ・ハロー効果によって人間性・社会常識にも優れていて仕事能力も高いと判断されやすくなったりする。その他、医師・弁護士・大学教授などの職業によって、人間性を信用されやすくなったり高い道徳観を持っていると判断されやすくなるなどがある。
ネガティブ・ハロー効果としては、容姿が悪くて見栄えがしないために、性格が悪く受け取られたり実際よりも知的能力が低く見られたりすることがある。実際には裕福な人でも、みすぼらしいボロボロの服装をしていると、貧乏で経済力のない人に見られることになるし、職業が肉体労働というだけで、体力のある荒々しい粗野な性格の人と判断されてしまうこともある。経済的事情などでやむを得ずに低学歴になっている人でも、学習意欲や知的水準が低いというような判断をされてしまう恐れがある。こういったネガティブ・ハロー効果には、社会慣習としての偏見や差別感情なども含まれていることが少なくない。
ハロー効果には、特定の目立つ項目に対する評価が他の項目の評価と実際に相関しているという『真のハロー』と呼ばれる現象もあり、この場合には認知的バイアスは働いていない。例えば、東大の卒業者は、平均以上に学業成績が高くて知性が高いというのは、『東大を卒業したという評価』と『平均以上の学業正規を取れる知能』とが実際に相関しているので、真のハローになっている。反対に、特定の顕著な特徴に引きずられて、それ以外の項目まで間違って評価してしまうことを『ハローエラー』といい、ハロー効果という時には『見かけだけで人を判断してはいけない(外見が良いから人間性も良い・外見が悪いから知性も低いなど)』というようなハローエラーを意味していると言える。
ハローエラーを生み出す要因としては、『対象者の全体的なイメージの良い・悪いが他の評価項目に影響を与えるという要因(全体的な雰囲気が爽やかなので性格が良いだろう)』『ある特定の分野の評価が他の分野の評価にまで用いられるという要因(数学が得意だから英語も得意だろう)』『評価者が評価軸の違いをはっきり判別できないという要因(科学者の専攻分野の細かな違いが分からず基礎科学も応用科学・工学もごちゃ混ぜにして考える)』などを想定することができる。