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2006年07月14日

[アミタール分析(amytal analysis), アミタール面接技法][バルビツール酸系とベンゾジアゼピン系の催眠鎮静薬]

アミタール分析(amytal analysis), アミタール面接技法

精神医学領域の古典的面接技法(分析技法)として、バルビツール酸系(バルビツール酸化合物)の鎮静薬(麻酔薬)を漸進的に静脈注射して行う『アミタール分析・アミタール面接技法』がある。強力なバルビツール酸系鎮静薬(睡眠薬)を用いて、意識水準を低下させ緊張を和らげて実施するのがアミタール分析であるが、最近の精神科面接では殆ど行われなくなっている。アミタール分析(麻酔面接)で得られる治療的効果が、薬剤の副作用の不利益を上回ると判断される時には実施されることもある。

アミタール分析の特徴は、鎮静薬の薬理作用によって意識をぼんやりとさせることで、半覚醒の変性意識状態へと患者を導くということである。その結果、面接中の精神的緊張を和らげ、自我防衛機制の抵抗反応を弱めることにつながる。アミタール分析を受ける患者は、緊張感や焦燥感が和らいだリラックス状態になることで、ありのままの素直な感情や無意識に抑圧(忘却)していた記憶を表現しやすくなるのである。

アミタール分析の作用メカニズムは、『意識の覚醒水準を低下させて、心的緊張・防衛機制・抵抗感を弱めることで、記憶の想起や感情の解放が起きやすくなる』ということである。日常的に思い出しにくい不快な記憶や自然な情動を想起させるという作用機序を考えると、アミタール分析の適応症には以下のような精神疾患(精神障害)があると考えられる。元々、アメリカのベトナム戦争帰還兵に多く見られた『戦争神経症(戦争のトラウマによるPTSDのフラッシュバックや環境不適応に繋がる強烈な恐怖感・不安感・睡眠障害)』の治療に用いられたのがアミタール分析の始まりである。

解離性健忘を含む心因性健忘、過去のトラウマと関係したPTSD(心的外傷後ストレス障害)、児童虐待のトラウマによる精神症状、過剰適応による心身症(アレキシシミアを伴う心身症)などがアミタール分析の効果を期待できる精神疾患・心理的問題といえるが、現在ではアミタールなど睡眠鎮静薬を用いて心理面接(心理療法)を行うケースは極めて少ない。また、十分なインフォームド・コンセントを成立させるだけでなく、心理面接場面に、医師以外の付き添い(看護士と親族など)がいないと職業倫理に関する問題やセクハラの疑惑に医師・患者が巻き込まれる恐れもある。

バルビツール酸系の薬剤は、精神科診療で短時間作用型の強力な催眠誘導薬(睡眠薬)として処方されることが多かった。鎮静と催眠、筋弛緩の作用が強力であることから、バルビタールやチオペンタール(商品名:ラボナール)は麻酔薬として静脈注射されることもある。また、抗けいれん薬や抗不安薬として精神神経科で処方されることもある薬剤で、中枢神経系の活動性を強く抑制する作用がある。

代表的なバルビツール酸系の薬剤(少量で鎮静・中等量で催眠・大量で麻酔・過剰投与で昏睡もしくは死亡という中枢神経系抑制の薬剤)には以下のようなものがあり、一般的な精神神経薬の用途では5〜10%希釈のナトリウム塩溶液(やカルシウム塩溶液)の静脈注射で使われることが多い。

商品名アミタール・イソミタール(一般名アモバルビタール)

商品名バルビタール・ホエイ(一般名バルビタール)

商品名チクロパン(一般名ヘキソバルビタール)

商品名フィノバール(一般名フェノバルビタール)

商品名イソミタールソーダ(一般名アモバルビタールナトリウム)

商品名ラボナ(一般名ペントバルビタールカルシウム)

商品名ネンブタール(一般名ペントバルビタールナトリウム)

商品名チトゾール(一般名チアミラールナトリウム)

商品名ラボナール(一般名チオペンタールナトリウム)

商品名ワコビタール・ルピアール(一般名フェノバルビタール・ナトリウム)


しかし、現在では「大量服用による自殺企図の危険性=過量投与による急性中毒」「耐性・依存性の強さ」などから睡眠薬用途でバルビツール酸系の薬を安易に処方することは殆どない。現在の精神科医療において、催眠誘導薬の第一選択として処方されることが多いのは、耐性と依存性が比較的弱いベンゾジアゼピン系の催眠誘導薬である。ベンゾジアゼピン系の薬剤は、過剰服用(OD:オーバードーズ)しても急性中毒を起こさず自殺遂行の危険が小さいことから、安全性と有効性のバランスが良い睡眠薬といえる。

ベンゾジアゼピン系(benzodiazepine)の薬理機序は、中枢神経系の神経伝達過程(精神運動性)を抑制する『GABA(γ-アミノ酪酸, γ(gamma)-aminobutyric acid )神経系』の受容体の働きを亢進することで、鎮静・催眠・筋弛緩の効果を発現するというものである。

posted by ESDV Words Labo at 05:38 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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