反抗期(negativistic age)と思春期
親の注意や先生の指導、社会のルール、権威的な規則などに従わなくなり、反抗的な態度を示しやすくなる発達過程の時期を『反抗期(negativistic age)』と呼ぶ。思春期の反抗期は、精神的自立や自我の確立を目指す正常な精神発達過程の一部としてあるもので、倫理観や良心の呵責がなくなり他者の権利・生命を侵害する事を楽しむような『反抗挑戦性障害・行為障害』とは区別される。
児童期から思春期に見られる行為障害(conduct disorder)は、社会規範(法律)や道徳観念を無視して、他者の基本的人権・財産を侵害する18歳未満の少年の行動レベルの障害であり、『反社会性パーソナリティ障害』に移行するリスクを孕んでいる。
反抗期には、幼児期(2〜4歳)の『第一反抗期』と思春期(小学校高学年〜中高生頃)の『第二反抗期』がある。2〜4歳頃の幼児は運動機能や言語機能が急速に発達してくる時期であり、『自我の発生・自律性の向上』が見られるので、親の言うことや注意を聞かなくなり、何でも自分のやりたいようにやろうとする頑固さ(意志の強さ)が見られやすくなる。これが第一反抗期である。第一反抗期は『自我・自意識の発生』と密接に関係したものであり、日常的には『子どものイヤイヤ病(何でもイヤ・嫌いといって言うことを聞かなくなる)』という言い方が為されることもあるが、第一反抗期が見られるのは『自発性・自律性の芽生え』として好ましいことでもある。
小学校高学年から高校生の思春期に見られる『第二反抗期』は、親の注意や教師の生活指導、社会の権威などに対して反抗するようになる時期で、『独立心・自尊心・主体性の高まり』によって思い通りにならない学校・社会・親子関係の現実と衝突しやすくなる。中学生・高校生にもなると身長が伸びて体重も増え知的能力も高くなっていくが、社会的には『大人と子どもの中間的な待遇・位置づけ』に留まっている。自分では大人と同等の自立心や主体性があると思っているのに、それを認めてくれない親・学校・社会に不満を抱いて反発するのだが、『自立の理想―現実の依存』との間に解消しがたい葛藤を感じる事になる。
第二反抗期には『親・教師への反発の側面』と『非行行為・反社会的行為の側面』とが見られるが、学業成績が悪くなったり学校環境に適応しづらくなることで反発・抵抗の度合いも強まっていく傾向がある。第二反抗期は『理想自我と現実のギャップ』や『独立心と依存性の葛藤』、『将来に対する期待と不安』、『自己アイデンティティの模索』などによって形成される事になる。しかし、最近は青少年の前に『大きな壁(思い通りにならない現実・規範)』となって立ちふさがる大人(親・先生)が減ってきたことから、青少年は衝突すべき大人を見失って第二反抗期が起こりにくくなっているという状況もある。
『友達親子』と呼ばれるような親の厳しさが見られない仲の良い親子が増加していたり、『叱れない教師』のように生徒の都合や思いに合わせて指導する教師が増えていたりすることで、社会の権威や親(先生)の締め付けに反発する第二反抗期は起こりにくくなっているのである。