般化(generalization)
行動主義心理学(行動科学)の条件づけや学習の効果が、『初めに条件づけされた刺激(状況)』以外の刺激(状況)にも見られる事を『般化(generalization)』という。生理的な無条件反射を応用したレスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)でも、報酬と罰を応用したオペラント条件づけ(道具的条件づけ)でも『般化』は見られるが、『般化される行動(反応)』には適応的な行動もあれば非適応的(病的)な行動もある。
親から虐待を受けている子どもが、親が帰ってくる時の玄関の鍵を開ける音が聞こえると、条件反射で不安感が高まって心拍数が高まったり汗をかいたりするが、その条件反射が『自宅以外の場所・親以外の相手』に対しても起こってしまうようになることがあり、これも『般化』の一例である。学校の体育の授業でドッヂボールの速いボールをキャッチができるようになると、『般化』が起こって昼休みの友達同士でのドッヂボールの時間にも速いボールをキャッチできるようになる。
自発的に勉強して学校のテストの成績で良い点数を取った時に、親がご褒美として500円のお小遣いを上げると、その報酬(正の強化子)としてのお小遣いが般化して、何か報酬になるものを貰える見込みがないと勉強する意欲が起きにくくなってくる。大声で怒鳴って叱責する先生に対して『恐怖の条件づけ』が成立すると、それが般化してしまい、別に怒っていない人が大声で話しているだけで、びくっとして恐怖感を反射的に感じてしまうようになったりする。テレビで人気のお笑い芸人が言っている台詞や歌などを真似しているうちに、いつの間にか日常生活の中でも思わずその台詞や歌を口ずさんでしまう、これも広義の般化である。
学習行動や条件づけによって習得した行動・反応が、初めに学習した環境(時間・場所・相手)とは異なる環境でも見られるようになることを『般化』というが、この般化の概念は精神病理学の症状形成機序としても用いられる事がある。例えば、パニック障害(panic disorder)を持つ人が、一度電車の中で心悸亢進・大量発汗のパニック発作を起こして発狂不安を感じた時には、違う日の電車やバスでも同じようなパニック発作を起こすのではないかという予期不安が起こりやすくなるが、これも条件づけの般化である。
恐怖症や不安性障害を持つ人でも、初めに持っていた『恐怖・不安の対象』が、それ以外の対象にも拡張されることがあり、この時にも学習や条件反射による般化が起こっているのである。精神分析の自我防衛機制の一つで精神疾患の原因にもなる『転移(transference)』は、過去の重要な人物に向けていた強い感情を、現在の人間関係の中で再現して異なる人物にその感情を向け変えることであるが、この転移も感情反応が『初めの人物』とは異なる人物に向けられるようになった般化として解釈することができる。