ロゴセラピーのPIL(Purpose In Life test)
『人間が生きる意味・価値』を探求して創出することを重視したV.E.フランクル(V.E.Frankl, 1905-1997)は、過酷な強制収容所体験を綴った『夜と霧』の著作を書いて、実存主義哲学とも相関するロゴセラピーという心理療法を考案した。V.E.フランクルは精神病理学の原因論の分野でも哲学的な考察・分析を精力的に行って、『実存的フラストレーション』や『精神因性神経症』といった独自の概念を提唱している。
実存的フラストレーションというのは、自分の生きる意味や人生のプロセスの価値を見失ってしまい、自分が何ものであるのかが分からなくなり何をすれば良いのかも見えなくなった時に陥る実存的な欲求不満状態の事である。ライフサイクル論を考案したE.エリクソンが青年期の発達課題の挫折として上げた『自己アイデンティティの拡散(自己アイデンティティの確立の失敗)』とも近似した概念であるが、実存的フラストレーションが高まると自分の存在意義を実感できなくなり、他者との人間関係も悪化しやすくなってくる。
V.E.フランクルはこの実存的フラストレーションの上昇と自分が生きている意味の喪失によって精神疾患が発生しやすくなると仮定し、この実存的な葛藤が中心にある病態を『精神因性神経症・実存神経症』という疾病概念を用いて表現した。フランクルのロゴセラピーでは『人生の意味・価値・目的』といった主観的で抽象的な観念が問題になってくるが、従来の心理療法研究ではこの主観的な生きる意味の課題を、数量的に研究することが難しいという限界があった。
そこでJ.クランボウ(J.Crumbaugh)とL.マホーリック(L.Maholick)というフランクルの志を継ぐ心理学者たちが、ロゴセラピーで使用される実存的概念や抽象的観念を分かりやすく数量的に測定するための心理テストを開発した。この心理テストがタイトルに掲げた『PIL(Purpose In Life test)』であり、日本語訳ではシンプルに『人生の目的テスト』などと呼ばれている。PILの心理テストを作成する過程の研究調査(リサーチ)によって、人生を生きる意味や目的を追求する態度の強弱には、『性別・学歴・知能指数(IQ)』がほとんど影響しない事が明らかにされている。

