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2006年07月27日

[エリック・バーンが開発した交流分析のインパス(impasse of transactional analysis)]

交流分析のインパス(impasse of transactional analysis)

フロイトの精神分析の口語訳とも呼ばれる交流分析(TA, Transactional Analysis)の特徴は、「平明な用語と簡潔な説明」によって成り立っている理論ということである。1950年前後に、アメリカの精神科医エリック・バーン(1910-1970)が開発した精神療法の理論体系が交流分析だが、正統派精神分析の難解な概念を用いた理論と比較すると、簡明な概念を説明に用いていて分かりやすいだけでなくカウンセリングにも応用しやすい。

エリック・バーンは、個人の「一貫性のある行動・思考・認知・感情パターン」を特徴づける精神機能を「自我状態」と定義して、人間の心は3つの自我状態から成り立っていると考えた。3つの自我状態とは「P(Parent, 親の自我状態)・A(Adult, 大人の自我状態)・C(Child, 子どもの自我状態)」であり、Pは更に「CP(Critical Parent), NP(Nurturing Parent)」に分けられ、Cは更に「FC(Free Child), AC(Adapted Child)」に分けることが出来る。

3つの自我状態の機能・特徴を簡単に説明すると以下のようになる。P・A・Cは相互に関連し合っており浸透性を持っている。P・A・Cを機能させる心的エネルギーは、時・場合・相手に応じてP・A・Cの領域へと自由に備給されるが、特定の自我状態が余りに強すぎたり弱すぎたりしてバランスが崩れると様々な不適応や精神症状が起こってくる。

CP(Critical Parent)……「批判的な親」の自我状態であり、父性的で指示的な特徴を持ち、社会規範や倫理観念に従った行動やコミュニケーションを取らせようとする精神機能である。CPの目的は、社会規範を遵守して権威的な指示に従わせることで、社会環境や対人関係への適応を進めることであるが、CPが強すぎると超自我の抑圧が強くなりすぎて様々な心理的問題や不適応が生じてくる恐れがある。

NP(Nurturing Parent)……「擁護的な親」の自我状態であり、父性的で寛容な特徴を持ち、自分を精神的危機やストレスから保護してくれるような働きをする精神機能である。外部要因である社会規範や道徳観念よりも、個人のメンタルヘルスの維持向上を優先する特徴があり、包み込むような優しさや温かみのある保護欲求として実感される。NPの目的は、精神的ストレスや危険から自我を守ることにあるが、NPが強すぎると外部社会や対人関係に適応する為のストレス耐性や積極性が発達しない恐れがある。

A(Adult)……「大人」の自我状態であり、冷静な思考過程を元にして合理主義的な判断や功利主義的な決定を行う精神機能である。Aが適切に働く事で、衝動的な行動や不適切な発言をして自滅することがなくなるだけでなく、Aの自我状態の調節機能によって「P・A・Cの間の最適のバランス」を保つことが出来る。

FC(Free Child)……「自由な子ども」の自我状態であり、ありのままの感情や考えを表現することができ、社会規範や他人の指示に従うことを嫌う自由奔放な溌剌とした精神機能のことである。屈託のない明るさと無邪気な奔放さが特徴であり、FCを適度に発揮することで人間は創造的で魅力的な人生を生きることができる。その一方で、FCが余りに強すぎると、社会のルールや常識感覚に反する逸脱行動を取りやすくなる問題がある。

AC(Adapted Child)……「適応的な子ども」の自我状態であり、社会の決まりや他人の指示に対して従順で聞き分けの良いという特徴を持ち、ACを適切に働かせることで他人に迷惑を掛けずに与えられた環境に適応することが出来る。しかし、ACは自分の内面的な欲求や率直な感情を抑圧する側面があるので、ACが強すぎると転換性障害や身体表現化障害など過剰抑圧による精神障害が発症することがある。FCとACのバランスの取れた対人関係を持ちながら、自分の感情や意見を過度に抑圧し過ぎずに社会環境に適応していくことが大切である。

交流分析の自我状態が長くなったが、ここで説明する「インパス(impasse)」というのは、「解決困難な精神的葛藤状態」あるいは「不快な結末を繰り返す不適応な膠着状態」のことである。

エリック・バーンが考案した「無意識的な人生計画」を意味する説明概念「脚本」は、幼少期の親子関係によってその後の性格形成や人生計画が決定してしまいやすい傾向を示すものであり、「脚本分析」により親の影響を受けて書かれた脚本(無意識的に決定されている人生計画)を明らかにすることが出来ると考えた。しかし、幼少期の親子関係や成育環境でその後の人生計画が半ば決まってしまうという考え方に、グールディング(R.L.Goulding)という交流分析家は反対した。

グールディングは、脚本によって示される人生計画は「主体的な再決断」によって何度でも書き換えることが出来ると主張したが、グールディングは解決困難な膠着状態である「インパス」の原因についても分析している。

グールディングは、「親(P)と子(C)の自我状態の間で繰り返される葛藤」「親の自我状態Cと子どもの自我状態Cの間の膠着(大人になりきれない親が子どもに対して理不尽な命令を出し、子どもの自我状態の理性的な部分である“小さな教授”が反発する場合)」「親から与えられた禁止規則に気づかず、FCとACの間で起きている膠着状態」がインパスの原因になると予測したが、インパス解決のポイントは「理不尽で無意味な禁止規則と合理的で有意義な禁止規則の見極め」にあるといえる。



posted by ESDV Words Labo at 22:34 | TrackBack(1) | い:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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