E.L.ショストロームのPOI(Personal Orientation Inventory)
心理学者のE.L.ショストローム(E.L.Shostrom)が作成した“自己実現度・潜在能力の発揮度”を測定するための質問紙の心理テストが『POI(Personal Orientation Inventory)』である。心理アセスメントで用いられる心理テストでは、『知能・発達・パーソナリティ(性格構造)・精神病理・社会適応・対人関係・親子関係』などさまざまなものを調査することができるが、その多くは『平均値からの偏り・標準的ステータスからのズレ』を発見するために行われている。
その意味では、従来の心理テストは精神鑑定や精神疾患の鑑別、異常の早期発見などに代表されるように、『正常性と異常性の区別・判断』を明らかにすることに主要な目的があり、『精神の健康性・日常生活の傾向性』などを調べることには余り関心が払われてこなかった。E.L.ショストロームが開発・作成したPOI(Personal Orientation Inventory)の最大の特徴は、『自己実現の達成度・潜在的能力の発揮度』といった精神活動のポジティブな側面に関心を寄せて、精神的な健康性や充実感のレベルを測定しようとしたところにある。
自己実現度を測定する質問紙のPOIは、複数のクライアント(参加者)を対象としてエンカウンター・グループやグループ・セラピー(集団精神療法)の効果測定に用いられることが多かった。POIは『時間志向性』と『内的志向性』という2つの大きな心理測定尺度によって構成されており、時間志向性ではどのような時間の使い方をしているか、どういった活動や取り組みをしているかといった外的現実性の質問項目が配置されている。
内的志向性の尺度では、内面的な価値観や信念、自己評価、自己実現の方向性などを問いかける質問項目が配置されており、『被検者の自己実現に向かう内的世界・心的リソース』を明らかにすることが目指されている。E.L.ショストロームは、“外向的・実際的・活動的な時間志向性”と“内向的・信念的・思索的な内的志向性”との組み合わせとバランスによって、被検者の自己実現の達成度や能力のポテンシャルの発揮を測定できると考えていたのである。POIの心理テストは、精神の健康性や可能性、発展度に焦点を合わせた画期的な心理テストだったが、20世紀後半以降には『自己実現の水準・日常生活の充実度・人間関係の親密度・自己能力の開発度』など精神活動のポジティブな部分を測定することを目的にした心理テストの作成は増えている。

