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2011年07月27日

[アブラハム・マズローのB価値(B-value)と欲求階層説]

アブラハム・マズローのB価値(B-value)と欲求階層説

ヒューマニスティック心理学(人間性心理学)に分類されるアブラハム・マズロー(Abraham Maslow, 1908-1970)は、低次元の欲求から高次元の欲求へと段階的に上昇する『欲求階層説』を提唱したことで知られる。欲求階層説では人間の欲求を『生理的欲求・安全と安心の欲求・所属愛の欲求(親和欲求)・承認欲求(自尊欲求)・自己実現欲求』に分類しているが、マズローは“食欲・睡眠欲・性欲”に代表される動物的・本能的欲求が満たされると、人間の欲求はより“社会的・自己承認的・貢献的”なものへ発達していくと考えた。

人間は食料・水が不足していたり、最低限度の生活も覚束ないような危機的な困窮状況では、自分が生物的に生き残るための“本能的・生理的欲求”が強くなって、他人の事を思いやったり社会環境に適応したりするような精神的余裕を失いやすい。また、犯罪・災害の被害に遭って危機感が強まっている時、失業して収入が完全に途絶えている状況などでは、“安全と安心の欲求”が強まることになり、この段階でも社会的な承認欲求や他者への共感性などを持つことは難しいのである。

A.マズローは『生理的・本能的欲求』『安全・安心の欲求』を低次元の欲求と定義したが、これらは人間が自己の生存や安全を守るために必要な基本的欲求であり、この2つの基本的欲求が満たされることによって、人間の視野や関心は広くなり『社会的な欲求・自己と他者との関係性』を考えるだけの精神的余裕が生まれてくるのである。社会の一員や集団のメンバーとして認められたい、社会的集団に所属することによって“自分の居場所”を手に入れたいという欲求が『所属愛の欲求(親和欲求)』であり、大多数の人は社会集団に全く所属しないと疎外感や無力感を感じやすくなってしまう。

既存社会のメンバー(一員)として認められた後には、その集団の中で自分の能力・実績を認められたいとか、他者から自分の存在価値や有能性を評価されたいとかいった『承認欲求(自尊欲求)』が必然的に高まりやすくなってくる。一般社会における人々の判断や行動基準の多くは『所属愛の欲求』と『承認欲求』によって規定されており、どこかの社会集団に所属して自己アイデンティティを確立したり、世間体・虚栄心(見栄)を含めて他者から自分の存在・能力・地位を認められることに日常生活の重点が置かれている事が多い。

しかし、生理的欲求から承認欲求(自我・自尊の欲求)までは、その欲求が満たされない『欠乏状態』において誰もが同じように持つ欲求という意味で『欠乏欲求』と呼ばれる。マズローはこの画一的・同質的な欠乏欲求よりも、個別的・創造的な『自己実現欲求』のほうを高次の欲求として定義し、自己実現欲求が満たされる時に究極の恍惚感や歓喜が得られるとした。自我の枠組みを超えた高次の欲求が満たされる時には、自己と世界(宇宙)が一体化する圧倒的な歓喜・充実の感情が湧き起こるが、この自己実現を伴う超越体験のことを『至高体験(peak experience)』と呼んでいる。高次の自己実現欲求は他人と同じではない自分固有の方向性(成長性)と可能性を持っており、“客観事実”と“価値判断”が一体化する『B価値(B-value)』によって支えられている。

実証的な科学的思考や哲学的な倫理規範では、『物事が〜である』という客観事実と『〜すべきである・〜してはならない』という価値判断(当為命題)を区別することが当たり前であるが、自我・私的欲求を超越した至高体験や自己実現状況では、ありのままの事実と自分がどうすべきかの価値判断が一体化する『B価値』が形成されるという。自己実現が進んでおり自我の精神活動に束縛される部分が少なくなった人は、自分や物事がただ存在するだけで究極的な価値があるという“Being(存在)”の価値を心から実感して承認できるようになる。この“Beingの尊重・感動”にまつわる普遍的価値のことを『B価値』と呼んでおり、このB価値には『真・善・美・完全無欠・統一的秩序』などの普遍性の高い価値が包摂されているのである。

posted by ESDV Words Labo at 22:21 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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