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2006年08月07日

[アルコール関連障害(アルコール離脱症候群・アルコール精神病)][ウェルニッケ‐コルサコフ症候群]

アルコール関連障害(アルコール離脱症候群・アルコール精神病)

2.アルコール離脱症候群

アルコールを継続的に摂取し続けると耐性と依存性を生じ、段階的に精神依存の形成から身体依存の形成へと嗜癖問題が深刻化していく。アルコール離脱症候群というのは、習慣性(依存性)が形成されてからアルコール摂取を中断したり減量しようとする時に起こってくる離脱症状(禁断症状)の症候群のことであり、依存性薬物を中断・減薬しようとするときに発症してくる退薬症候群に類似したものである。

アルコールは、他の依存性薬物や麻薬と比較しても非常に強い依存性と耐性を持っているといわれ、いったんアルコール依存症やアルコール精神病が発症するとそれを克服・治療する過程では、ほぼ必ずといっていいほどアルコール離脱症候群の不快な症状が出てくる。

アルコールを中断して48時間以内に発症してくる離脱症状を『早期離脱症候群』といい、その後に続いて起きてくるアルコール離脱に伴う身体症状を『後期離脱症候群』という。早期離脱症候群では、動悸や頻脈、大量発汗、吐き気、食欲不振などの自律神経系症状が起きてきて、続いて、手や指がガタガタと振るえる振戦や筋肉の痙攣、全身性の強直間代性痙攣なども起こってくることがある。代表的なアルコール離脱時の精神症状としては、不安感、焦燥感、イライラ、音や光に対する刺激過敏性、憂鬱感や気分の落ち込み、不眠睡眠障害といったうつ病と共通するような症状が発症してくる。

アルコール離脱して48時間以降かなり長い期間にわたって患者を悩ませるのが、『後期離脱症候群』であり、アルコール精神病の幻覚(小動物・虫・小人の幻視、パレイドリアという室内の壁紙に人の影などを見る幻覚)・妄想(被害妄想や嫉妬妄想)・譫妄・意識障害・見当識障害と極めて近い重篤な精神症状が発症してくる。激しい興奮や怒りを見せて精神錯乱や異常な激昂を示すこともあり、急激な人格変化と攻撃性の亢進にも注意と配慮が必要である。

3.アルコール依存症

4.アルコール精神病(alcoholic psychosis)

アルコール依存症から精神機能や運動機能の異常が起きるアルコール精神病の病態の特徴は以下のようなものである。

4−1.手・指が振るえる振戦を伴う譫妄(せんもう)……アルコール精神病で夜間に見られる重篤な症状が、精神運動興奮を伴う振戦譫妄であり、意識混濁状態に陥って幻覚・妄想に苦しめられ、大量に発汗して大声を出したり暴れたりすることがある。

4−2.アルコール幻覚症

統合失調症(旧・精神分裂病)の陽性症状に似た幻覚症状がアルコール幻覚症である。比較的短期で症状は消失するが、自殺や犯罪にまつわる脅迫をしかけてくる幻聴症状や小さな虫や動物の群れが現れる小動物群幻覚などの不快感や恐怖感を感じる幻覚症状が多く見られる。

4−3.アルコール嫉妬妄想

アルコール依存症患者には、配偶者が不倫をして自分を見捨てるのではないかとか、恋人が浮気をして自分を馬鹿にしているのではないかといった異性との結婚関係や恋愛関係における嫉妬妄想が顕著に見られることがあり、これがDV(家庭内暴力, ドメスティック・バイオレンス)の原因となることもある。

4−4.コルサコフ症候群・ウェルニッケ症候群

アルコール依存症では必須ビタミンを摂取しない偏食やアルコール以外の食物を余り食べない食欲不振が見られる。栄養不足やビタミン欠乏症(ビタミンB1などの不足)を原因とする中枢神経系の障害(脳の器質的障害)が起こってくる可能性があり、その代表的疾患がウェルニッケ症候群コルサコフ症候群である。

ウェルニッケ症候群の症状としては、外転神経麻痺(眼筋麻痺)や運動障害(歩行困難)、眼球運動障害、譫妄・錯乱・興奮などの意識障害、意欲減退の抑うつ状態などがある。一般に、コルサコフ症候群よりもウェルニッケ症候群のほうが非可逆的な脳の病変があることもあり、生命の危険という観点からは重症度が高い。しかし、日常生活を過ごす基本的な精神機能全般を障害するコルサコフ症候群は、意識障害や運動障害を中核とするウェルニッケ症候群の後に続いて発病することが多い。脚気(かっけ)と同様にビタミンB1(チアミン)の極端な不足によって起こってくるウェルニッケ症候群とコルサコフ症候群は全く別物の病気ではなく、両者は相互に関係性と連続性を持つ脳疾患(神経性疾患)である。その為、『ウェルニッケ‐コルサコフ症候群』というように一まとめにして呼ぶこともある。

コルサコフ症候群の症状としては、過去に起こった出来事を記銘・保持・再生できなくなる逆行性健忘の症状を中心として、現在の日時・場所・人物を認識できなくなる失見当識の障害(視空間の認知・抽象概念化・論理的思考・現実検討能力の著しい低下)が見られるようになってくる。ごく最近の出来事や人間関係さえ思い出せなくなることもあり、その場合には自分の異常を相手に悟られまいとして作話行為(作り話を創作する行為)が目立ってくることになる。『ウェルニッケ‐コルサコフ症候群』は、アルコール依存症だけが原因となって発症するわけではなく、薬物中毒、脳の外傷や疾患、ウイルスなど感染症、老人性痴呆(認知症)などが原因となって発症することがある。

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アルコール関連障害と急性アルコール中毒

ラベル:精神疾患
posted by ESDV Words Labo at 21:50 | TrackBack(0) | あ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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