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2011年08月18日

[PCB(PolyChlorinated Biphenyl)とカネミ油症事件]

PCB(PolyChlorinated Biphenyl)とカネミ油症事件

PCB(PolyChlorinated Biphenyl)とは『ポリ塩化ビフェニル・ポリクロロビフェニル』の略称であり、耐熱性や電気絶縁性、耐薬品性といった優れた性質を持つ有機塩素化合物のことである。ビフェニルの水素原子が塩素原子で置換された化合物の総称であり、置換塩素の位置によって計209種もの異性体が生成される。PCBはその優れた化学特性を活かす形で、加熱用・冷却用の熱媒体、変圧器、コンデンサなど電気機器の絶縁油、可塑剤、塗料、ノンカーボン紙の溶剤などに用いられ、その毒性・危険性が周知されるまでは非常に利便性の高い有機塩素化合物として利用されていたのである。

PCBは1881年にドイツで初めて化学合成されて、1929年からは米国での工業生産が開始された。日本でも1954年から製造がスタートしたが、1968年に福岡県でPCBの体内汚染による大勢の被害者を出す『カネミ油症事件』が発生して、1972年(昭和47年)にPCBの生産・使用の中止を勧告する行政指導が行われた。翌1973年に、『化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律』が国会で制定され、1975年に発効してPCBの製造・輸入・使用が原則的に禁止されることになった。カネミ油症だけでなく、東京湾・瀬戸内海など日本近海の魚介類がPCBによって汚染される問題も起こった。1979年にはカネミ油症と同等の問題が、台湾で台湾油症事件として発生している。

PCBの最大の問題は、生物(生体)に対する毒性が極めて強いということであり、体内に摂取してしまうと脂肪組織に蓄積するので、完全に解毒・排除することが出来なくなってしまう。PCBには強い発癌性のリスクが認められており、経口摂取することで皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常などの各種症状を引き起こしてしまう。各国の法律でPCB使用が禁止されてからも、それ以前に作られた製品の回収対策は取られなかったので、2000年頃には世界でPCBを含む電化製品や蛍光灯の安定器からPCBを含む汚染された廃液が漏れる事故が続発して大きな公害問題となった。

『カネミ油症事件(カネミゆしょうじけん)』とは、1968年に福岡県北九州市小倉北区にあったカネミ倉庫株式会社が製造した“食用油(こめ油・米糠油)”の製造過程で、配管作業のミスでPCBが漏れて食用油に混入した事件であり、それを食べた西日本一帯の人たちに大規模なPCB汚染の健康被害が発生した事件である。食用油に混入したPCBがダイオキシン類に変質してそれを摂取した人は、『顔面等への色素沈着・塩素挫瘡(クロルアクネ)の肌の異常・頭痛など神経系障害・肝機能障害』などの症状を発症することになり、長らく苦しみ続けている。

妊娠中に汚染された油を摂取した女性のケースでは、胎児にPCBの有毒成分が伝わって皮膚が黒く色素沈着した赤ちゃんが生まれるなどショッキングな出来事もあった。このPCB・ダイオキシンの汚染による『黒い赤ちゃんの誕生』は、全国的にショックな話題として広まり、PCBの毒性・危険性が急速に知られることになった。

2002年に、当時の坂口力・厚生労働大臣が『カネミ油症の原因物質はPCBよりもダイオキシン類の一種であるPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)の可能性が強い』と認め、現在ではカネミ油症の原因物質はPCDF及びCo-PCBであると確定されている。しかし、カネミ油症の被害者たちには十分な補償が為されたとは言い難い状況であり、食用油を製造したカネミ倉庫・PCBを製造した鐘淵化学工業(現・カネカ)に対しては、今でも被害者の認定基準(症状が出ているのに認定を受けられない人たち)や賠償の方法(500万円の未払い補償金問題)を巡って未解決の問題が残されている。カネカは、医療費自己負担分の支払い、一律23万円の一時金、死亡時3万円の葬祭料の支払いなどの補償を行っているが、新たな認定患者への賠償責任については、『過去の免責を認めた和解』が済んでいるので追加的な賠償責任まではないとしている。



posted by ESDV Words Labo at 16:18 | TrackBack(0) | か:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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