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2011年08月18日

[ピーターパン症候群(Peter Pan syndrome)]

ピーターパン症候群(Peter Pan syndrome)

ピーターパン症候群(Peter Pan syndrome)は、現実の自分の能力や状況、環境を受け容れられずにどこかにもっと素晴らしい理想的な場所・幸福があるはずだと思い込み、いつまでも自己アイデンティティを確立できない『青い鳥症候群』と似た部分がある不適応状態である。チルチルとミチルの兄妹を主人公にしたメーテルリンクの童話『青い鳥』では、幸福をもたらす青い鳥を求めて各地を探し歩いたものの、結局そんな青い鳥はどこにもいない。疲れ果てた兄妹が自宅に帰って眠りこみ夢を見るのだが、目覚めてみると庭にいた薄汚れた鳩が青い鳥に変わっていた。この寓話では、『どこかにある理想の幸福・現状とは違う生活』をいつまでも追い求める無意味さと『現実の自分の状況・身近にある小さな幸福』を受け止める大切さを教えている。

『青い鳥症候群』では、現状の幸福や評価に満足できないために、一つの職場や仕事に安定できない落ち着かない心理的葛藤が問題になるが、『ピーターパン症候群』では、いつまでも子どものままでいて大人になりたくないという願望のために、精神的・経済的自立ができずに親や社会に依存し続けてしまうことが問題になる。サー・ジェイムズ・バリ(Sir James M. Barrie)の書いた児童文学の名作である『ピーターパン』は、永遠に大人にならない不思議な子ども達が冒険をして活躍する幻想的でエキサイティングな物語である。

ピーターパン症候群の最大の特徴は、苦労・努力・責任を伴う現実社会や職業活動(経済活動)などに興味・意欲が持てなくなり、大人として見られる年代になっても精神状態が退行して、自分のやりたいことや楽しいこと、責任を伴わないことにしか取り組むことができないという事である。永遠に子どものままで『好きなこと・楽しいこと・優しく守ってくれる人』に包まれていたいというピーターパン症候群では、精神発達の停滞や現実への不適応観、責任を果たせない自己不全感などの症状が出てきやすく、『大人としての責任・自立のための経済活動』に直面すると強いストレスを感じてパニック発作・抑うつ感などの心身症状が出やすくなる。

『大人になりたくない・職業活動をしたくない・社会的責任を取りたくない』というピーターパン症候群は、現実社会の価値観・構造の変化が急速になっていて適応が難しくなっていること、楽しいことばかりの娯楽的な消費社会において生産活動(仕事)のストレスだけが突出して強まっていること、モラトリアム(進路選択に迷う猶予期間)を容認する親・社会風潮があることなどが影響していると考えられる。楽しいことだけをしてやりたくないことはやらないままで済ませたいという幼児性や甘え、依存心がピーターパン症候群の根底にあるが、自分がやるべき本業(仕事)への関心・意欲だけが阻害されるという意味では、ニートの心理・自己評価とも関係するアパシーシンドローム(退却神経症)の要素も持っている。

『ピーターパン』やディズニーランドの世界のように、冒険や感動、華やかさ、面白さに溢れた世界で何の不安や悩み、ストレスもなく生きていきたいという理想は、大人の内面にもあるものだが、現実社会ではそういった幻想や依存性を抱えたままでは生きていくことが難しいという現実原則がある。精神分析のリビドー発達過程において、『快感原則』から『現実原則』への転換が起こるように、“幼児的な全能感・魔術的な思考(他人を操作して何でもして貰えるという幼児的な願望)”が去勢されることによって、人間は自分の人生を自分で切り開いていくという自立心・責任感が芽生えるのである。ピーターパン症候群では、『幻想的な世界観・大人になることの拒絶感』といった成熟困難の問題と向き合いながら、自分の人生に対する自立性ややるべきことの分別を高めていく地道な治療的アプローチが必要になってくる。

posted by ESDV Words Labo at 16:20 | TrackBack(0) | ひ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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