ビタミン(vitamin)とビタミン欠乏症:3
この記事は『前回のビタミンに関する記事』の続きになります。カシミール・フンクが抽出したのはビタミンB1(チアミン)であったが、このビタミンB1にアミンの性質があったことから、フンクは『生命活動に必須のアミン』という意味で“ビタミン=vitamine”と命名したのである。C.フンクが命名した初期のビタミンは“vitamine”のスペルであるが、その後にJ.C.ドラモンドがアミンを含まないビタミンを発見してそのスペルを“vitamin”に改めている。
C.フンクはその後にビタミンB2、ビタミンC、ナイアシン、チアミンなどの発見にも成功している。1913年に、エルマー・ヴァーナー・マッカラムがバター・卵黄の脂肪の中にマウスの成長に不可欠な成分があると気づき、1914年にその成分の抽出に成功した。マッカラムはこのビタミンを化学的性質によって『油溶性(脂溶性)A』と『水溶性B』とに分類している。1920年には、ジャック・セシル・ドラモンドが柑橘系の果物の中から壊血病を予防する『ビタミンC(アスコルビン酸)』の成分の抽出に成功したが、ビタミンCの成分には明らかにアミン (amine) が含まれていなかったので、ドラモンドはフンクの“vitamine”の綴り・発音を“vitamin”に改めている。
J.C.ドラモンドは、E.V.マッカラムが発見した『油溶性A』を『ビタミンA』と命名し、『水溶性B』も『ビタミンB』として分類した。その後の生化学の歴史では、更に様々な種類のビタミン(生命活動に必須の栄養素・アミンを含むものも含まないものもある)が発見されることになり、正確な化学構造が判明するまでの間はビタミンA、ビタミンB、ビタミンCというようにアルファベット順で名前が付けられることになった。ビタミンの発見・改名の歴史は『ビタミン欠乏症』の原因解明から始まることになったが、代表的なビタミン欠乏症としては以下のようなものが知られている。
脂溶性ビタミンの欠乏症
ビタミンA欠乏症の疾患・症状
夜盲症(視力の低下)、皮膚・粘膜などの乾燥化やドライアイ、角膜軟化症、ビトー斑、視力低下と失明、毛包周囲の角化。治療は、欠乏ビタミンを3000〜10000IU/日で内服を続ける。
ビタミンD欠乏症の疾患・症状
背骨の形成不全によるくる病、骨の発育障害による骨軟化症。治療は、1α-OH-D3を1〜2μg/日で内服。
ビタミンE欠乏症の疾患・症状
溶血性貧血、歩行不調、位置感覚の障害、未熟児の浮腫、脱毛症状など。治療は、欠乏ビタミンを10〜300mg/日で内服。
ビタミンK欠乏症の疾患・症状
出血しやすい傾向、新生児メレナ(血液凝固因子を産生できない新生児の消化管からの出血傾向)。治療は欠乏ビタミンを10〜50mg/日で筋注する。
水溶性ビタミンの欠乏症
ビタミンB1欠乏症の疾患・症状
脚気、ウェルニッケ脳症(意識障害・精神症状)。治療は欠乏ビタミンを10〜100mg/日で内服。重症度が高ければ、100〜200mg/日の静注でも行われる。
ビタミンB2欠乏症の疾患・症状
口角炎・口唇炎・口内炎・舌炎の口周辺で炎症が起こる症状、まぶしさを感じる羞明、涙が出る流涙、脂漏性皮膚炎、てんかん。治療は、欠乏ビタミンを30〜50mg/日で内服。
ビタミンB6欠乏症の疾患・症状
貧血、多発性末梢神経炎、脂漏性皮膚炎、口角炎、舌炎、てんかん。治療は欠乏ビタミンを5〜100mg/日で内服。
パントテン酸欠乏症の疾患・症状
四肢のしびれた感じ、足の灼熱感など感覚障害。治療は、パントテン酸を50〜100mg/日で内服。
ナイアシン(ニコチン酸)欠乏症の疾患・症状
ペラグラ(皮膚炎・下痢・脳機能の低下・認知障害や意識障害)。治療はニコチン酸アミドを50〜200mg/日で内服。
葉酸欠乏症の疾患・症状
巨赤芽球性貧血(悪性貧血)、下痢、舌炎、胎児の発育障害(神経管の閉鎖障害)や二分脊椎症。妊婦にとっては胎児の中枢神経系の正常な発育のために必須の栄養素になっている。治療は葉酸を10〜20mg/日で内服。
ビタミンB12欠乏症の疾患・症状
巨赤芽球性貧血(悪性貧血)、ハンター舌炎、末梢神経炎、亜急性連合脊髄変性症。治療は欠乏ビタミンを1mg筋注する。
ビオチン欠乏症の疾患・症状
乾癬、アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症性の骨関節炎、糖尿病、免疫不全症候群、脂漏性皮膚炎、舌炎、筋肉痛、悪心、嘔吐など。特に皮膚科疾患、皮膚の湿疹・炎症症状の原因の一つとして注目されている。治療は、ビオチン摂取が不十分なことによる後天性の『栄養型ビオチン欠乏症』では欠乏ビタミンを9mg〜12mg/日で、回数を3回ほどに分けて服用する。『先天性ビオチン欠乏症』では欠乏ビタミンを5mg〜20mg/日で、回数を3回ほどに分けて服用する。
ビタミンC欠乏症の疾患・症状
壊血病(小児の場合はメラー・バロウ病)。治療は欠乏ビタミンを50〜2000mg/日で内服する。

