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2011年09月07日

[引っ越しうつ病・心因性うつ病]

引っ越しうつ病・心因性うつ病

うつ病の薬物療法の研究に従事していたスイスの精神科医ポール・キールホルツは、うつ病をその発症原因によって『外因性うつ病・内因性うつ病・心因性うつ病』に分類したことで知られる。

外因性うつ病……頭部外傷や脳血管障害、脳疾患など身体的(外部的)要因によって発症・維持されるうつ病。怪我・病気によって派生的に発症すると想定されるうつ病で、脳疾患によって発症するうつ病を『器質性うつ病』、それ以外の身体疾患によって発症するうつ病を『症状性うつ病』と分類することもある。

内因性うつ病……先天的な遺伝・体質・器質など特定不能な要因(内部的要因)によって発症・維持されるうつ病。純粋な生物学的原因が想定されるうつ病。

心因性うつ病……人間関係や喪失体験、トラウマ体験、環境変化、過労状態など精神的ストレスの蓄積によって発症・維持されるうつ病。緊張や不安、喪失感などを感じる心理社会的原因が想定されるうつ病で、一般に何らかの『苦痛な出来事・嫌な体験』が発症原因として考えられるケースは心因性うつ病となる。

引っ越しうつ病は生活環境や人間関係が大きく変化する『引っ越し』を契機にして、気分の落ち込みや睡眠障害、意欲減退、不安感・無力感などのうつ病症状が出てくるものであり、これも心理社会的原因が想定される心因性うつ病の一種である。慣れ親しんでいた今までの仕事・生活・人間関係の環境を離れるというのは、それだけで精神的ストレスの原因となるが、引っ越しうつ病に罹りやすい人はテレンバッハの『メランコリー親和型性格』の特徴に当てはまっていることが多い。

うつ病の病前性格として知られるメランコリー親和型性格の特徴は『几帳面・生真面目・対人配慮の強さ・秩序志向性・完全主義傾向・義務感や責任感の強さ』などであるが、この中にある秩序志向性は『権威主義・既存秩序への依存性・安定志向』と結びついているので、生活環境や人間関係がガラリと大きく変わることへの抵抗力(耐久性)が弱くなりやすいのである。引っ越しうつ病は『転勤・転居』をきっかけにして発病に至ることが多いが、転勤ではそれまでの上司・部下関係における心理的な安定感や安心感が失われやすくなり、権威的な上司や職場から自分が必要とされて守られているという感覚が障害されることでメンタルヘルスが悪化することが多いのである。

引っ越しして『転居』するという事は、特に日本人のような『農耕定住民族の歴史を持つ民族』にとって大きな精神的ストレスになりやすいという文化差・民族差を指摘する意見もある。遊牧移住民族と農耕定住民族との引っ越しうつ病の発症リスクの差異は統計的に確認されているわけではないが、『地域コミュニティへの帰属心・近隣住民との人づき合いへの依存性』が強い人ほど引っ越し(転勤・転居)が強い精神的ストレスとして受け取られやすく、うつ病により罹りやすくなるとは言えるだろう。

引っ越しうつ病のように『生活環境・職場状況(仕事内容)・人間関係(コミュニティ)の大きな変化』がうつ病発症につながりやすい問題として、『昇進うつ病』『空の巣症候群』といったものがある。普通に考えると『降格・左遷・解雇』といった待遇の変化が大きな精神的ストレスになりやすいのだが、うつ病の病前性格の特徴を持っている人は生真面目・完全主義であり人(会社)の期待に応えようとする責任感が強いため、『昇進昇格・会社や上司からの強い期待・部下や業務管轄に対する責任増大』が逆に大きな精神的ストレスになってしまうことがあるのである。

空の巣症候群や荷下ろし症候群というのは、子育ての役割を終えた専業主婦などが発症しやすいメンタルヘルスの悪化であるが、男性では仕事を引退して自分の役割を見失った時に、空の巣症候群に類似した『気分の落ち込み・意欲や興味の低下・自己アイデンティティの拡散(自分の存在意義の低下した感覚)』が起こりやすくなるので注意が必要である。『子育て・会社での仕事』といった義務的な活動や自分に割り当てられた役割を失った時に、『自分が何をすれば良いのか分からなくなる・改めて考えると自分にはこれがやりたいということが無いことに気づく=自己アイデンティティの拡散による自己評価の低下及ぶ目的意識の喪失』というのが空の巣症候群の問題形成の機序(メカニズム)になっている。



posted by ESDV Words Labo at 04:00 | TrackBack(0) | ひ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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