ウェブとブログの検索

カスタム検索





2011年10月06日

[病跡学(pathography)]

病跡学(pathography)

病跡学(pathography)を文字通りに解釈すれば、『病気の痕跡・履歴』を追いかけながら研究する学問という事になる。病跡学とは“科学者・文学者・芸術家・政治家・芸能人”など精神的に特異で傑出した人物を取り上げて、その人物がどのような精神疾患を発症していたのか、どういった心理状態にありどんな苦悩・葛藤を体験していたのかを、史料を元に系統的に調査したり合理的に心的過程を推測したりする学問である。病跡学の調査研究に用いられる資料・史料としては『自伝・伝記・日記・手紙・書簡・創作作品』などがあり、それらを系統的かつ網羅的に読み解いていく中で精神疾患の病状や本人の心理状態を再構成していくのである。

カウンセリング研究としての病跡学は、過去の特徴的で典型的な症例を調べることにもつながり、『病跡学のケースワーク』を通して各種疾患の概要を理解したり、同種の症例に出会った場合の対処法を準備したりすることができる。病跡学の対象になる個人には、歴史的に著名な人物や芸術家・作家など特殊な才能に恵まれていた人物が多いので、『天才の個性としての病理・性格構造・創造性』だけを研究するものと思われがちである。学術的には天才や傑物のみの心理状態を対象にしたものではないが、実際には『過去に生きていた天才の精神内容・病理性と才能の研究』といった側面が強くなっている。

病跡学という言葉自体は、ドイツの精神科医メビウスが造語したパトグラフィー(Pathographie)が語源となっており、“pathography”の訳語としては他にも病誌・病蹟などがある。古典的な病跡学は過去に生きた天才の精神病理と業績・創造性との相関を探索するものが殆どであるが、最近では病跡学の対象となる人物の職業やイメージが広がってきており、『精神病ではない歴史的著名人の生活史』が精神状態の履歴と紐づけられて記述されることも増えている。現代では、歴史的人物の精神的側面や家族歴などに焦点を当てた『伝記・評伝』として病跡学を捉えることができ、その人物の精神状態の履歴や性格・価値観の形成などを詳しく調査した研究をまとめて病跡学と呼んだりもする。

病跡学は史学と伝記、精神医学、臨床心理学の『学際的領域』に位置づけられる学問であり、天才の創造性・業績と精神疾患(逸脱・異常・症状・妄想)との相関関係を探求していくことを目的にしている。病跡学がその学問の目的として重要視しているのは、精神疾患や病的逸脱の背景にある『創造性・才能・可能性』であり、そのポジティブな希望を志向するスタンスは身体や精神・知能(発達)に障害を抱える人たちが描く『アウトサイダー・アート』の研究にもつながっていっている。



posted by ESDV Words Labo at 09:34 | TrackBack(0) | ひ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。