ウェブとブログの検索

カスタム検索





2011年10月06日

[病識(insight into disease)]

病識(insight into disease)

『病識(insight into disease)』とは、自分が何らかの病気であることに対する自己認識、自分が特定の病気あるいは不特定の病気を発症しているであろうことを自覚的に知っている事である。一般的に、自己認識や自覚症状(痛み・苦しみ)などによって自分が病気であることを知っている状態を『病識がある』と言い、自分が客観的には病気であるにも関わらず、自分自身ではそのことに気づいていない状態を『病識がない』という風に言う。

精神医学や臨床心理学では『病識の有無』によって精神疾患の重症度を判定することもある。客観的に見て異常な行動を取っていたり奇異な発言をしているにも関わらず、自分の心身状態の異常に気づけない場合(=病識がない場合)には『精神病圏の精神疾患』の発症が疑われたりもする。一般的には、幻覚・妄想の陽性症状や自閉・感情鈍麻の陰性症状が出る統合失調症において、『病識がない患者・自分が病気であるという自覚がない患者』が増えると考えられていたが、現在では病識のある統合失調症患者が少なからず存在することも分かっている。

ドイツの精神科医・哲学者のカール・ヤスパース(Karl Theodor Jaspers, 1883-1969)は病識の定義について、『個別の精神疾患の症状の全てあるいは、疾患全体としての種類・重症度の水準(程度)を正しく自覚して判断できること』と述べているが、K.ヤスパースのいう病識を持つ人は非精神病の健康な人でもなかなか難しい。しかし、初めに病識を持っていなかった人が、専門家の医師や周囲の家族・友人とのコミュニケーションを通した結果として病識を持てるようになるか否か(他者の説明的・合理的な話を正確に理解して受け容れられるかどうか)は、『精神疾患の重症度』に関する一つの目安になることはある。

カール・ヤスパースは1913年からハイデルベルク大学で精神医学を教えて『精神病理学総論(1913年)』の主張を上梓して、既存の精神医療のあり方や精神疾患の理解の仕方に疑義を呈したが、哲学者としてのヤスパースはナチス時代のファシズムやユダヤ人迫害を経験して『責罪論』というドイツの戦争責任を問う著作も書いている。ヤスパースは哲学史では実存主義の哲学者に分類されているが、戦後はドイツの戦争責任の考察だけでなく、東西冷戦・資本主義と社会主義(共産主義)・核兵器の問題についての思想的分析も行っている。精神医学の分野では、患者の症状を客観的に観察するだけでなく、患者が症状・心理について話す言葉を一つ一つ正確に理解していく『記述精神医学(記述精神病理学)』の立場を取った。



posted by ESDV Words Labo at 09:35 | TrackBack(0) | ひ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。