ウェブとブログの検索

カスタム検索





2011年10月06日

[表現療法(expressive therapy)]

表現療法(expressive therapy)

表現療法は心理療法の技法・方法論のひとつであり、英語の表記では“expressive therapy”と書いたり“art therapy”と書いたりする。芸術療法という呼び方が為される時には、“アートセラピー(art therapy)”のことを意味しているが、芸術療法も表現療法も同じ『作業技法』に含まれる心理療法である。心理療法・カウンセリングはその治療機序の分類によって、精神分析・ゲシュタルト療法のような“分析技法・洞察技法”、クライエント中心療法のような“支持技法”、表現療法・遊戯療法(プレイセラピー)のような“作業技法”に分けることができる。

アートセラピー(芸術療法)では、絵画や彫刻、刺繍、アクセサリー作り、粘土細工といった芸術活動(造形行為)をしながら『自分の内面・感情』を生き生きと表現していくことになるが、表現療法というのも『自分に適した自己表現活動』を探し出して自分の内的世界を表現することで心身の状態を改善していこうとするものである。そのため、表現療法では、作文や書道、舞踊(ダンス)、器械体操、即興劇、歌、ヨーガなど、ありとあらゆる自己表現活動がカウンセリングの手段や目的として用いられる事になり、『言語化する事が難しい心的内容・感情的葛藤』を作品や行動に投影していく事になる。

表現療法・アートセラピーは、知的障害児や発達障害児の療育指導で用いられる事も多く、『言語的コミュニケーション』を殆ど用いないので、言語能力が未熟な子どもや知的障害者にも実施しやすいという利点がある。実際にも心身障害者のリハビリテーションや社会復帰施設のオリエンテーションで表現療法が活用されることが多い。また健常者にとっても、『自己表現活動』をすることで心身がリラックスしたり、抑圧していたつらい感情を発散できたりといったポジティブな効果が得られる。

不安や強制がないリラックスできる環境で『自己表現(制作・運動・身体表現)の促進』を行うことは、自分の精神や感情をストレートに開放することにつながり、自分で自分の気持ち・考えを自然に受け容れやすくなる。表現療法になぜ効果があるのかというと、『自己表現の促進=カタルシス(感情浄化)効果』『自己理解の深化=自己洞察を深める機会』にある。特に、自分が描きたいものを描きやりたいことをやるという自己表現のあり方が、それまでなかなか言葉にできなかった自分の複雑なコンプレックスや苦悩を和らげてくれるのである。

アートセラピーという言葉を初めて学術論文に使用したのは、1940年代に肺結核患者の治療をしていたイギリスの医師A.ヒル(A.Hill)で、心理療法としてのアートセラピーを定義したのは1961年にアートセラピーの雑誌を発刊したE.アルマン(E.Ulman)だが、表現療法で行われている内容は芸術療法(アートセラピー)とほぼ同一のものである。カウンセラーは『投影法(projective method)の心理テスト』として表現療法(芸術療法)を用いる事もある。絵画にせよコラージュにせよ作文(小説)にせよ、複数の作品を多く制作するにつれてそのクライアントに特有の作風・特徴・傾向性が見られやすくなり、『クライアントの性格構造・内的葛藤・トラウマ関連の記憶』を理解するための参考になるのである。

アートセラピーを開発したE.アルマンは、『正常な人格構造の統合・病理性のある人格構造の再統合』を創作行為や造形活動といった自己表現によって促進していけると考えたが、表現療法(アートセラピー)ではクライアントが制作した作品ややっている行動に『無意識的な情動記憶・衝動性』が投影されやすくなる。幼児期〜児童期の子どもに人物画や家族画、バウムテストの樹木などを描かせると、『子どもの家族関係の悩み・精神状態の変化』が反映されやすいという特徴があり、表現療法を心理アセスメントとして上手く適切に活用することで、『他者への攻撃性の強化・母親への愛情飢餓(寂しさ)・児童虐待の問題(恐怖・怒り)』などの早期発見・早期対応につなげることができる。



posted by ESDV Words Labo at 09:39 | TrackBack(0) | ひ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。