心理テストの評定尺度法(rating scale method)のメリット・デメリット
臨床心理学で用いられる心理検査(心理テスト)は“心理評価尺度(心理測定尺度)”と呼ばれる事があるが、『評定尺度法(rating scale method)』は心理評価尺度で用いられるもっともスタンダードな選択項目の尺度である。心理テストにはビネー式知能検査やウェクスラー式知能検査(WISC,WAIS)などの『知能検査』もあるが、知能検査は各年齢に合わせて作成された平均的な課題に回答できるかどうかを調べる検査なので、『評定尺度法』は基本的に用いられない。
パーソナリティ検査(性格検査)や精神疾患の可能性を調べる検査の殆どで『評定尺度法』が用いられているが、評定尺度法とは被検者について調べたい項目(選択肢)を提示して、被検者が自分にもっとも当てはまると思う項目を選んでいく方法である。うつ病の質問紙法の心理評価尺度として国際的に良く使われている『BDI(Beck Depression Inventory, ベック抑うつ評価尺度)』でも評定尺度法が使われている。BDIは認知療法を開発したとされるペンシルバニア大学の精神科医アーロン・ベックが作成したものであり、うつ病の症状の種類と重症度を網羅的かつ正確に測定できるような質問項目の工夫がされている。
評定尺度法とは『毎日いつも憂鬱な気分がある・物事に対して興味や意欲を感じなくなった・人間関係が億劫に感じる』という項目について、最も当てはまる場合を“5点”、全く当てはまらない場合を“0点”とすると、自分の心理状態は何点に当てはまるかを選ぶような方法のことである。クライアント(被検者)について調べたい質問項目を上げて、あらかじめ設定した『連続量(0点〜10点など)』や『非連続量(非常にあてはまる・あてはまる・余りあてはまらないなど)』から選ばせるのが評定尺度法となる。大勢の人がイメージしているごく一般的な心理テスト(質問紙法)の典型とも言える。
評定尺度法の長所・メリットは、『誰にとっても分かりやすく答えやすいこと』や『テスト結果の判定が簡易・迅速であること』にあるが、クライアントが自分で自分の心理状態をチェックするという意味では主観性が強く影響する方法でもある。評定尺度法の短所・デメリットは、『主観的な思い込みに基づく選択になりやすいこと(妥当性に疑問が出ること)』や『ハロー効果・社会的望ましさ(平均化傾向)の影響を受けやすいこと』である。相手の肩書き・イメージという部分的な目立つ特徴によって、相手の人間性や価値の全体(それ以外の部分)がまとめて判断されやすくなる心理効果のことを『ハロー効果(光背効果)』と呼んでいる。