AEスケール(accurate empathy scale)と来談者中心療法(client centered therapy)
AEスケール(accurate empathy scale)とは、来談者中心療法(クライエント中心療法)のカール・ロジャーズ(C.R.Rogers)の流れを汲むトゥルアックス(C.B.Truax)によって開発された『正確(accurate)な共感性』を査定する為の尺度である。カール・ロジャーズは、精神医学モデルに基づく指示的な面接技法やフロイトを始祖とする権威的な精神分析療法ではない『新たなカウンセリング』の開発に尽力した人物である。
カウンセリングという用語の誕生は1931年であり、ロジャーズのカウンセリング技法の登場よりも古い。しかし、ロジャーズ以前のカウンセリングは医学的診断と治療を行える医師の専売特許であり、ロジャーズが非医師のカウンセラー(心理学者)による共感的な対話を中心としたカウンセリングを創始した功績は大きい。
『受容的・共感的・非指示的な心理面接技法』としてのカール・ロジャーズの来談者中心療法は、重症度の高い精神疾患の治療には余り適応が良くないことが分かったが、職業指導面接(産業カウンセリング)や学校カウンセリング、家庭問題を対象とした家族療法、スポーツ選手のメンタル相談など広汎な心理相談分野に応用されることになる。
カール・ロジャーズの理論体系と調査研究は、共感的理解に根ざしたヒューマニスティック(人間主義的)なカウンセリングを継承したトゥルアックスだけでなく、マイクロカウンセリングを創始したアレン・E・アイビー(Allen. E. Ivey)やヘルピングの心理学を提唱したロバート・R・カーカフ(R.R.Carkhuff)にも非常に大きな影響を与えた。
現代的なカウンセリングの基礎理論と実践技法を整備したカール・ロジャーズが、クライエントに対するカウンセラーの基本的姿勢として最も重視したのが徹底的傾聴と共感的理解、肯定的受容であるが、トゥルアックスのAEスケールとはその共感性(empathy)を正確に測定する為に開発された尺度である。
AEスケールでは、カウンセラーの共感性を9つのステージ(段階・階層)によって評定するが、共感性の本質をロジャーズの言葉で簡潔に表現すれば『クライエントの私的な世界をあたかも自分自身のものであるかのように感じ取る』ことである。共感性とは『完全に相手の立場や感情と一体化すること』ではなく『あたかも相手と同じ立場や感情であるかのように(as if)感じ取ること』である。客観的な共感性を査定する評価尺度としては、トゥルアックスのAEスケール以外に、EES(Emotional Empathy Scale, 情動的共感尺度)やEUS(Empathic Understanding Scale, 共感的理解尺度)などがある。
AAMFT(American Association for Marriage and Family Therapy, アメリカ夫婦家族療法学会)
AAMFT(American Association for Marriage and Family Therapy, アメリカ夫婦家族療法学会)とは、家族システムの正常化と家族関係の円滑化を目的にして行われる家族療法の専門学会で、アメリカで最大の規模と高い研究水準を誇っている。心理的な問題や家族間の不和を外部の人たちに知られたくないとする世間体の強い日本では、家族全員が参加して問題を解決していく家族療法は余り隆盛していない。
しかし、児童虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)、ひきこもり、アダルトチルドレンなどの家庭内部の問題の増加を考えると、AAMFT(アメリカ夫婦家族療法学会)のような家族療法・夫婦問題を専門的に研究する学会の発展が望まれる。家族全体のシステムの異常によって発生している問題を、個人の精神障害の症状や性格上の問題として片付けるのではなく、家族間関係の修復や家庭機能の調整といった作業を家族全員で推し進めていかなければならない。臨床心理学を教授する大学や大学院、専門機関は、今後、個人療法の専門家育成だけでなく家族療法や集団療法を専門とする臨床家の育成にも力を入れていかなければならない情況となっている。

