クルト・レヴィンのAグループ(action group)とアクション・リサーチ(action research)
ゲシュタルト心理学やグループ・ダイナミクスの先駆的研究者として知られるクルト・レヴィン(Kurt Lewin, 1890-1947)は、アクション・リサーチ(action research)という客観的なデータやフィールド・ワーク(実地調査)に基づく科学的研究方法を提唱した。環境条件を統制して行われる実験研究から得られる「客観的データ」と現実の状況を観察するために行う「フィールド・ワーク(実地調査)」とを組み合わせて、問題解決的で実効性のある科学的研究を行うところにアクション・リサーチの特徴がある。
アクション・リサーチは、社会問題の解決や企業組織の対人関係の改善、集団力学(グループ・ダイナミックス)の解明などを目的にして行われる実践的な研究方法であり、仮説理論を構築して、実践的な活動へと応用していくものである。企業の目標達成や人員の能力開発、集団状況の改善、対人関係の改革などの具体的な問題に対して、有効な対処や解決を提示できる「実践的な理論の構築」が産業分野や学校教育、医療・カウンセリング分野では期待されているので、アクション・リサーチのような研究方法が参考となる。
アクション・リサーチは、グループ・ダイナミックスの知見や方法論を応用した社会工学の分野でも用いられる研究法だが、その場合には、集団行動の力学的な制御やマクロな社会問題の解決がダイレクトに目標とされることになる。アクション・リサーチでは、対象や状況を分析して「仮説」を立て、仮説に従って実際に「行動」し、その行動の有効性や仮説の正当性を「検証」し、問題や間違いがあれば「修正」して、類似の社会問題にも「適用」してみるという段階を踏んで研究が行われる。
その実用的な研究過程のプログラムのことをAグループ(Action group)というが、Aグループを並べてみると以下のようになる。
『計画段階(解決すべき問題事象を正確に観察して、仮説を立て解決方法を計画する)→実践段階(仮説に従った解決法に必要な教育や練習をして実践してみる)→評価過程(目標達成度を基準にして、実践の有効性や仮説の正当性を評価する)→修正過程(実験研究と実地調査を組み合わせて問題点や改善点を特定し修正する)→適用過程(一応の仮説の理論的妥当性と実践的有効性が検証されれば、類似した問題事象にその方法を適用してみる)』
アクション・リサーチでは科学的実践的研究法であるAグループの他に、人間関係の直接的体験(今、ここでの体験学習)とグループ・ダイナミクスの理論を通して、人間関係のトレーニング(訓練)や組織開発の任務を実践していこうとするTグループのプログラムもある。人間関係(集団状況)の体験学習であるTグループは、クルト・レヴィンが行ったミーティングがヒントとなり開発されたものである。教育分野で応用される場合にはTグループは、ラボラトリーメソッドと呼ばれることもあるが、レヴィンの死後にBST(Basic Skil Training)と呼ばれていたものが、NTL(National Training Laboratories)によってTグループへと再編成されることになった。

