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2011年12月14日

[過活動膀胱(OAB:overactive bladder)の症状・治療]

過活動膀胱(OAB:overactive bladder)の症状・治療

過活動膀胱(OAB:overactive bladder)は、過去には単純に『頻尿・尿意切迫・失禁』などの用語で説明されていた排尿に関する生理学的症状だったが、2002年にパリで開催された国際尿禁制学会(ICS)で『過活動膀胱』が正式な疾患名として採用された。頻尿(尿意頻数)1日に10回以上などの頻繁な排尿の状態を言っていたが、過活動膀胱(OAB)においては概ね『昼間8回以上あるいは夜間3回以上』が頻尿症状の基準とされているが、OABの主要症状には以下のようなものがある。

尿意切迫感……強い尿意を感じて小便をしたくなり漏らしそうになってしまう。

頻尿(夜間頻尿)……昼間に8回以上、夜間に3回以上で排尿の回数が異常に多い。

切迫性尿失禁……突発的な尿意の高まりがありトイレまで我慢することができずに失禁してしまうことがある。

日本に過活動膀胱の潜在的な患者は約830万人いると推定されているが、実際には『特別な病気ではないと考える・高齢なので仕方ないと思い込む・病院で頻尿や失禁の相談をするのは恥ずかしいと感じる』などの理由で泌尿器科を受診する人は相当に少ない。統計的には、40歳以上の12%に当たる8人に1人が過活動膀胱を発症すると予測されているが、基本的に『加齢・老化』が危険因子(リスクファクター)であり、高齢者になるほど排尿関連の悩みや困難を抱えやすくなる。過活動膀胱は特に60〜70代以上の男性に多く見られる疾患である。

一般的に健康な成人であれば、“約400〜500ml”の尿を膀胱に貯め込むことができるが、過活動膀胱の患者では“100ml程度”の尿が貯まってくると、膀胱が収縮して自動的に尿意を催して我慢することが難しくなる。膀胱の容量については、失禁を避けるためにトイレに早めに頻繁に行く習慣をつけることによって、余計に膀胱の内腔が縮小してしまい、平均的な尿の容量(400〜500ml前後)を貯めることが出来にくくなる。そのため、排尿は細切れに頻繁にするのではなく、ある程度の時間を掛けて膀胱に十分な尿が貯まってからするようにしたほうが良い。

過活動膀胱では、膀胱の容量が小さくなったり収縮しやすくなったりすることで、尿がいっぱいになる前に膀胱が不随意的に勝手に収縮して、尿失禁を起こしやすくなるという泌尿器系の病気である。切迫性尿失禁そのものは、脳の疾患(脳梗塞・脳出血・パーキンソン病など)や脊髄の疾患(脊髄損傷・脊髄梗塞など)、前立腺肥大症、高齢要因でも発生するので、他の身体疾患との鑑別診断も大切になる。

医学的には『過活動膀胱』とかつての『間質性膀胱炎』との間に本質的差異はないとする意見もあるが、軽症の間質性膀胱炎を広義の過活動膀胱として定義することも多い。現在では原因不明で膀胱の炎症・出血・痛みの症状がある『間質性膀胱炎』は、ESSIC(間質性膀胱炎と膀胱痛症候群の研究に関する欧州学会)の2006年の提案によって、より応用範囲の広い『膀胱痛症候群』へと名称が変更されている。過活動膀胱(OAB)も病因は不明であり老化の影響も大きいとされるが、排尿筋(膀胱平滑筋)の機能異常によって症状が発症する。 定義上では『腹圧性尿失禁』はOABには含まれない。

OABの治療は『生活指導を軸にした行動療法』『薬物療法』の併用によって行なわれる。生活指導の内容は、水分摂取量の制限とカフェインを含むコーヒー・紅茶などの摂取回避である。行動療法としては、排尿の間隔を少しずつ延長させていき膀胱容量を増加させる『膀胱再訓練』や下半身の筋肉を伸ばすストレッチ・マニュアル的な運動を用いる『骨盤底筋訓練』などがあるが、高齢者でトレーニングが難しい状態の場合には『介護補助(排泄介助)』が対応の中心になってくる。

薬物療法では膀胱の収縮を抑制して自律神経系(副交感神経)に作用する『抗コリン薬(ポラキス・BUP-4)』が標準治療で用いられるが、この抗コリン薬を1〜2ヶ月服用することで80%程度の患者の症状改善が見られる。アセチルコリンの結合を阻害する抗コリン薬では、ムスカリン受容体遮断による循環器(血圧上昇)・消化器(胃痛・胃もたれ)の副作用に注意しなければならない。それ以外にも、排尿筋を弛緩させて失禁が起こりにくくする『カルシウム拮抗剤(アダラート,ヘルベッサー,ペルジピン)』がOABの失禁予防治療に用いられる。

抗コリン薬にはオキシブチニン、プロピベリン、トルテロジン、ソリフェナシン、イミダフェナシン、プロパンテリン臭化物、フェソテロジンなどがあり、医師の説明と処方箋に基づいて服薬するようにする。頻尿や残尿感の症状を緩和するために『塩酸フラボキサート』が用いられるが、夜尿症・遺尿症の治療には精神科・心療内科で『三環系抗うつ薬(イミプラミン・アミノトリプチン・クロミプラミン)』が処方されるケースもある。一部の抗うつ薬には、副交感神経の排尿作用を抑制する作用(副作用の一種)があり、その薬効によって夜間の頻尿や夜尿症を抑制しやすくなるというわけである。



posted by ESDV Words Labo at 05:18 | TrackBack(0) | か:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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