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2006年09月21日

[新行動主義者C.L.ハルのS-O-R理論(Stimulus-Organism-Response Theory)][ゲシュタルト心理学とS-S理論(Sign-Significate Theory)]

新行動主義のC.L.ハルのS-O-R理論(Stimulus-Organism-Response Theory)

『行動主義心理学のS-R理論』の記事では、J.B.ワトソンのS-R理論(Stimulus-Response Theory)を元に外部世界の刺激(S:Stimulus)に対する反応(R:Response)の連合(結合)として、人間の行動形成機序(行動メカニズム)を理解した。環境要因の影響を過度に重視して、『外部刺激に対する条件反射の束』であるS-R連合で人間の行動を理解しようとするワトソンの行動主義は、行き過ぎた『環境決定論』として批判されることがある。

ワトソンの行動主義が想定した環境決定論的な行動機序(行動メカニズム)では、学習心理学が考える学習(learning)の効果や先天的要因(遺伝・気質・知能)による能力の差異などを適切に説明することが難しい。そこで新行動主義(neo-behaviourism)の心理学者であるC.L.ハル(C.L.Hull, 1884-1952)は、1943年の『行動の原理』においてS-R理論を改良したS-O-R理論(Stimulus-Organism-Response Theory)を提唱したのである。S-R理論に、『O(Organism, 有機体)』の仮説構成的概念を加えることで、学習効果の個人差や同一刺激に対する反応の個体差について、合理的な説明を与えることが出来るようになった。

S-O-R理論(Stimulus-Organism-Response Theory)において、刺激(S)と反応(R)の間に入れられるO(Organism, 有機体)とは、刺激・強化などの独立変数や反応の従属変数に影響を与える『媒介変数』のことである。O(Organism, 有機体)とは、人間・動物など生物個体に特有の内的要因であり、器質的要因や遺伝的要因、性格要因などを含むものと考えると分かりやすい。C.L.ハルは、有機体の内的要因(認知要因)であるO(Organism)の論理的構成概念を新行動主義に持ち込むことで、何故、同一の刺激や状況において個体は異なる反応を取ることがあるのかという疑問に回答を与えることが出来た。

ハルの提示したS-O-R理論(Stimulus-Organism-Response Theory)は、人間の行動の生起と変化を統合的に説明できるという意味で、一般法則としての完成度は高いが、同時にO(Organism)という汎用性の高い仮説的説明概念には科学的な客観性がないという問題が指摘される。急進的行動主義(徹底的行動主義, radical behaviourism)に分類されるB.F.スキナー(B.F.Skinner, 1904-1990)は、実証主義や操作主義を前提とする自然科学としての行動主義(行動科学)を志向したので、ハルの反証可能性に乏しい仮説演繹的な理論構築に対して批判的であったとされる。

学術研究活動における『操作主義』とは一般的に、観察された現象や事物を、『科学的な諸概念』に当て嵌めて一般理論化しようとする操作的な研究態度を指す。あるいは、実際的な観察・調査・測定の操作を通して、科学的概念を定義するという意味でも操作主義という用語が用いられる。操作主義は、ブリッジマン(Percy Williams Bridgman, 1882-1961)という物理学者によって提起された概念である。操作主義的な研究態度を取ることによって、『無秩序で曖昧な事象』『科学的概念の一つ』として分類整理することが出来るのである。

ハルが仮説した自己保存欲求を持つO(有機体)の概念と外部環境への適応機制は、あらゆる人間行動を説明できる汎用性があるが、刺激に対する反応を媒介する変数であるO(有機体)がブラックボックス化してしまい反証可能性が乏しくなるという欠点がある。観察可能な客観的な行動だけから人間の行動原理を構築しようとするのがスキナーの立場であり、ソーンダイク試行錯誤学習からヒントを得たオペラント条件付け(道具的条件付け)理論では、スキナー箱の実験条件の統制とネズミの行動の観察から実証主義的な理論化が進められることとなった。

S-S理論(Sign-Significate Theory)

S-S理論(Sign-Significate Theory)とは、認知心理学的な観点から人間の行動原理を解明しようとする理論であり、記号(sign)と意味(signification)の相関を類推するような学習行動の見通しと予見によって人間の行動が生起し変化するという理論である。

S-S理論(Sign-Significate Theory)に分類される理論としては、遺伝・気質・性格などの個体要因と人間関係・状況・場所などの環境要因の関数として行動が決定すると説くクルト・レヴィン(K.Lewin, 1890-1947)『場の理論』やゲシュタルト心理学を発展させたW.ケーラー(Wolfgang Kohler, 1887-1967)『洞察説』などがある。

クルト・レヴィンの考えた行動理論は、"B=f(P・E)"のシンプルな関数(B:Behavior, P:Person, E:Environment)で表現される。ゲシュタルト心理学を創始したヴェルトハイマーやコフカと並ぶ初期のゲシュタルト心理学者であるW.ケーラーは、オペラント条件付けのような試行錯誤を通した段階的な学習行為のみによって行動が変化するわけではないと考えた。ケーラーは、瞬間的なひらめきや着想、直感によって即座に理解できる『洞察学習(insight learning)』の可能性を示唆し、これを『見通し学習』と呼んだのである。

新行動主義に分類されるE.C.トルーマン(E.C.Tolman)『サイン・ゲシュタルト説』もS-S理論の一つとされるが、この学説は環境世界にある部分的な手がかりやサインを見出して、問題解決のヒントを得る認知地図を作成し、全体性(ゲシュタルト)を構成することで行動に変化が起きるというものである。



ラベル:心理学 研究
posted by ESDV Words Labo at 03:49 | TrackBack(0) | え:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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