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2006年09月26日

[A.L.エドワーズのSD値(Social Desirability, 社会的望ましさ)を排除したEPPS(Edwards Personal Preference Schedule)]

A.L.エドワーズのSD値(Social Desirability, 社会的望ましさ)を排除したEPPS(Edwards Personal Preference Schedule)

被検者の精神病理や性格傾向、心理状態を査定する心理検査(心理テスト)には、与えられた選択式の質問項目に回答していく『質問紙法(Questionnaire)』とロールシャッハ・テストやTAT(主題統覚検査)、バウム・テストのような無意識領域の心理内容を投影する『投影法(投映法, projective method)』とがある。

専門的知見と臨床経験に基づいて検査結果を解釈する『投影法』の心理テストは、絵画や図形、インクのしみに対する自分の回答がどういった意味を持っているのかがクライエントには分からないことが多いので、A.L.エドワーズ(A.L.Edwards)のいう『SD(Social Desirability, 社会的望ましさ)』の影響を受ける度合いが弱い。反対に、一般的な質問項目に選択方式で答えていく『質問紙法』では、自分の『はい・いいえ』の選択や『五段階評定』での選択がどういった心理テストの結果に結びつくのかを推測しやすいので、社会の一般的な価値観や道徳規範に従う『社会的望ましさ(SD)』の影響を受けやすくなる。

例えば、『知らない人と話をする時には、酷く緊張して手や腋に大量の汗をかく』などの質問項目に『はい』と答えることは、内向的な性格傾向や社会不安障害(対人恐怖症)の精神疾患の結果に結びつきやすいと推測できるし、『気分が塞ぎこんで何をしても楽しくない』という質問項目に『いいえ』と答えることは、うつ病の可能性を排除して楽観的な性格や明るい気持ちの判定を得やすいと考えることが出来る。その為、『精神機能に関連する病気であることは望ましくない』という社会的望ましさ(SD)やある種の社会的な偏見の影響を受けている人ほど、精神疾患の可能性を排除する『自分の健康性をアピールする回答』を選んでしまうことがあるのである。

『社会的望ましさ(SD)』の影響というのは、既存の社会制度における価値観や常識的な倫理観に適合した回答を無意識的にしてしまうという影響である。例えば、『私は他人が苦しんでいても、積極的には助けようとは思わない』という質問に対して『はい』と答えれば、社会通念的な倫理観に違背する冷淡で無慈悲な人間であることを認めることになってしまう。そこで本当は苦しんでいる人を助ける意志や共感的な感性がなくても、社会的望ましさの影響を受けて、無意識的に『いいえ』という回答を選んでしまうことがある。

それ以外にも、明るく温厚で社交的な人間という『社会的望ましさ』に合わせて、本当は人間関係が苦手で他人とコミュニケーションすることが苦痛なのに、『大勢の人と一緒にパーティや食事をすることは楽しい』『知らない人と新たに知り合えるような機会を積極的に求めている』と答えることで、自分の外向的な性格傾向を無意識的にアピールすることなどがある。『社会的望ましさの影響』とは、詰まるところ、『社会の大多数の意見や価値観にある程度従うことで、異常性や病理性を指摘されたくないという心理』に根ざしているといえる。

心理検査や世論調査などに見られる社会的望ましさに従う回答や主張とは、『マジョリティ(多数派)の主張する健康性・正常性・適応性・正当性から逸脱しない無難な回答』のことなのである。

社会的望ましさの問題と合わせて、『質問紙法』の心理テストでは、質問項目の内容を考慮してある程度、自分が希望する心理検査の結果を得ることが可能であるという問題がある。うつ病やパニック障害、全般性不安障害、強迫性障害などの精神疾患の医学的診断を回避して精神的な健常性をアピールしたいと思う患者は、質問紙に意図的に虚偽の回答をすることで、精神疾患の診断を付けられないようにすることが理論上は可能ということでもある。

クライエントの性格傾向や精神病理の重症度、生活状況、価値観などを質問紙法の心理検査で正確に査定する為には、十分に多い被検者のサンプルから検査結果の統計をとって、『社会的望ましさの評価尺度(Social Desirability Scale Value:SD scale value)』を作成することが必要である。社会的望ましさの評価尺度で高い値(SD値)を得ている項目に対して、肯定的な回答を多く返す被検者は、とりあえず社会的望ましさの影響を比較的受けやすいと判断することが出来る。

A.L.エドワーズは、SD(社会的望ましさ)の影響を出来るだけ低く抑えることで、心理検査の妥当性を高めることが出来ると考え、独自の性格検査(personality test)である『EPPS(Edwards Personal Preference Schedule)』の性格検査をした。15の性格特性を評価できるEPPSには225項目の質問が用意されているが、選択式の質問項目には『社会的望ましさがほぼ等しい対立的な叙述文』を並べるという工夫がされていて、SDの影響を最小限度に留めている。

EPPSは、被検者の人格を多面的に評価して、大まかな精神の正常性と異常性を鑑別することが出来るとされるが、EPPSでは『達成・追従・秩序・自律・親和・他者評価・自己顕示・救護・支配・内罰・養護・変化・持久・異性愛・攻撃性』の15種類の性格特性の相対的な強さを測定することが可能である。A.L.エドワーズのEPPS開発に理論的影響を与えたのは、投影法のTAT(Thematic Apperception Test:主題統覚検査)をモーガンと一緒に開発したH.A.マレー(H.A.Murray)である。エドワーズは、マレーの『社会的動機(social motive)の理論』にある親和動機と達成動機に、人間の顕在性欲求のルーツを見て取り、15の性格特性を測定する質問項目のリストを作成していったという。

posted by ESDV Words Labo at 21:34 | TrackBack(0) | え:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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