家族療法のファミリー・グループ(family group)とプレイセラピー(遊戯療法):1
ファミリー・グループ(family group)とは家族を対象としたエンカウンターグループ(集団療法)の対象であり、複数のメンバーが相互に作用し合っている『家族システム』を支持的かつ問題解決的に機能させることを目的にしたものである。
ファミリー・グループとは『一つの家族』だけを指すものではなく、『複数の家族を合わせた集団』を指すこともあり、例えば『3組の家族全員(親6人・子ども8人など)』をエンカウンター・グループの対象となるファミリー・グループとして取り扱うこともある。
ファミリー・グループの基本理念はエンカウンターと同じく『価値のある出会い+オープンな本音の交流』であり、一つの家族の内部でそれぞれが言いたいことを言い合うだけでなく、複数の家族の間で“それぞれが抱えている家庭問題・適応問題・精神障害”について率直で共感的な意見を交換し合ったりもする。ファミリー・グループの方法論には『プレイセラピー(遊戯療法)』の実践や理論も取り入れられており、『本音と本音の交流に潜在する遊びの要素』を通して、普段言葉にできない内的世界の感情や葛藤を投影することで、心理的なカタルシス(感情浄化)の効果を得やすくなるのである。
女性臨床家のV.M.アクスラインの遊戯療法では、指示や介入、強制を最大限に排除した上で、子どもの内的世界を投影する自由な遊びを促進したが、集団家族療法の一つであるファミリー・グループもまた『非指示的な療法(それぞれの家族の自由性・自発性を引き出す技法)』としての特徴を持っている。
フランスの哲学者であるロジェ・カイヨワは、遊びの歴史的・文化的な考察の仕事で知られているが、R.カイヨワは遊びの『ハレの非日常性』や『種類の多様性』を指摘して遊ぶことによって創造性や知的好奇心、バイタリティが刺激されると考えた。遊びには『目前の現実世界』とは別に『特別に楽しい時間・空間』を想像力で作り出せるという驚異的な力があり、その遊びの楽しさは『精神的な癒し・新たな創造性』にもつながっていきやすい長所を秘めている。
遊び(プレイ)のセラピューティック(治療的)な効果としては、人間の精神を疲弊させやすい『単調さ(退屈さ)・面白味の無さ・感情の抑圧・閉塞感』を改善するという事があり、指示や拘束、介入などを受けずに遊び的要素のあるコミュニケーションを本音で楽しむことによって、ファミリーグループの家族療法はより望ましい効果を発揮するのである。