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2006年10月03日

[SPS(Student Personnel Services:学生の全人的発達援助):E.H.エリクソンの精神発達論に見る自我アイデンティティ獲得の問題]

SPS(Student Personnel Services:学生の全人的発達援助):E.H.エリクソンの精神発達論に見る自我アイデンティティ獲得の問題

学校教育における『学生生徒の個性・能力・素因』に即した全人的な心理学的援助(発達支援・能力開発・問題解決)のことを、『SPS(Student Personnel Services:学生の全人的サービス)』、あるいは、『SPW(Student Personnel Work:学生の全人的ワーク)』という。

学校生活を送る学生を対象とした教科指導(学習指導)や生活指導(生徒指導)では、教員一人が担当する生徒の数の多さなどによって、学生個人を集団を構成する要素として見ざるを得ない場面が多くあるが、SPSは生徒個人を細かく見ることが難しいという学校教育の弱点を、学校カウンセリングや個別相談などによって補う全人的な心理学的サービスである。SPSは、一般の学校教育活動から切り離されたものではなく、広義の『全人的な教育理念』の重要な一翼を担っている。

生徒の全人的サービスであるSPS(Student Personnel Services)の最大の特長は、教科指導や生活指導以上に・・に『学生個人の個性・能力・性格』を見ていき、それぞれの生徒の特性に適した総合的発達(全人的発達)を支援していくことである。総合的発達とか全人的発達とかいった言葉で表現される学生生徒の発達とは、教育指導による知的能力の開発や学業成績の上達のみに囚われない発達のことであり、具体的には、『心理的・社会的・知的・情緒的な発達』を全体的に促進していくことになる。

心身両面のバランスの取れた発達、社会生活に上手く適応する為のコミュニケーションスキル(対人スキル)の発達、学習成績の上昇と結びついた知的発達などを目指してSPSは実施されることになる。また、知・情・意のバランスの取れた精神発達を支援する為の『生徒の援助計画の全体』を指してSPS(Student Personnel Services)やSPW(Student Personnel Work)と呼ぶこともある。

中学校や高等学校で用いられる学習指導要領に準拠したガイダンスもSPSの一部であり、その目的は、学校卒業後の進路に待ち受ける学問的課題や職業的問題を解決できる『能力の開発』と十全な能力を発揮することによる『社会環境への適応』である。

生徒ひとりひとりが、充実した人生を意欲的に歩み、社会的な責任を果たしていく為には、学校教育段階において『適切な自己理解』を促進して、『個性に合った能力開発』『環境適応のためのコミュニケーション教育』を行っていく必要がある。最近、大きな社会問題となっている社会活動を拒絶して自室に閉じこもる『ひきこもり』の問題も、学校時代の不登校(登校拒否)が遷延(長期化)した結果であったり、いじめのトラウマが多刻化して『対人恐怖症と合併したひきこもり』の問題が起こってくることが少なくない。

ひきこもりの問題は、社会環境における『自我同一性(アイデンティティ)の確立』を阻害するので、E.H.エリクソンのライフサイクル論でいう『アイデンティティの拡散』という精神的危機に見舞われることになる。これは、自分が所属する社会集団において、自分が果たすべき役割や職業を持てない状態であり、『〜としての自己』という社会的アイデンティティを確立できない苦・や葛藤を感じることになる。

アリストテレスが古代ギリシアの時代に既に喝破したように、人間は『社会的な動物』として人生を送るという宿・から完全に自由になることが難しく、自尊心や有能感という自己肯定感を維持する為には、何らかの社会的役割(職業活動・社会参加)を担って一定の社会的義務を果たす必要があるのではないだろうか。自己の『連続性』や『一貫性』によって支えられるアイデンティティ(自己同一性)には以下のようなものがあり、『自分がこの社会において何者であるのか?』というアイデンティティの獲得は、『社会・他者・集団との係わり合い(コミュニケーション・参加行動・職業活動)』によって達成されるのである。

『会社員・公務員・専門家としての自己』『彼氏・彼女としての自己』『父親・母親としての自己』『ボランティアとしての自己』『長男・長女としての自己』『男性・女性としての自己』など、自分の置かれた社会的文脈や生活状況によって、様々な社会的アイデンティティを私達は持つことになる。

エリクソンは、この『アイデンティティ獲得・アイデンティティ拡散』を青年期の発達課題とし、自己の将来の職業選択や進路選択に・む青年期には、社会環境や政治制度の側が『モラトリアム(社会的アイデンティティ選択の猶予期間)』の期間を設けなければならないと主張した。現代におけるモラトリアム期間は、過酷な受験競争から解放され義務的な行為を大幅に免除される『大学時代のキャンパスライフ』であるとされるが、大学に進学しない高卒者や中卒者は特別な問題がない限り、大学進学者に比べてモラトリアム期間は短いと言われている。



posted by ESDV Words Labo at 09:11 | TrackBack(0) | え:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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