フィールドスタディ(field study)とホーソン工場の研究(ホーソン実験):1
人工的に環境条件が整えられた“実験室”で行われる研究ではなく、研究しようとしている対象が存在して活動している“実際の現場(フィールド)”に出向いて行う研究のことを『フィールドスタディ(field study)』という。心理学分野におけるフィールドスタディは、厳密には文化人類学・社会人類学などにおけるフィールドワークとは異なり、必ずしも『関与しながらの観察・参加的観察(participant observation)』を伴うわけではない。
フィールドスタディは研究方法として、『現場の被検者との共同作業(発達心理学では子どもと一緒に遊ぶような行為も含む)』や『現地の人たちとの共同生活』といった参加的観察を用いるのではなくて、基本的には『現場・現地の人たちの感想や考え、状況』を調べるためのツールとして質問紙法の心理テストを用いるのが普通である。
つまり、自分自身が研究対象(調査しようとする人たち)の中に溶け込んで『感覚的で主観的な体験』をするのではなく、研究対象だけでの活動状況やその感想について『客観的なデータ』を収集して解釈しようとするのがフィールドスタディと呼ばれる研究手法である。
フィールドスタディ(field study)で実験環境を整えるために独立変数を設定したりするような場合には、特に『野外実験法』という呼び方が用いられることもある。心理学・教育学分野で有名なフィールド・スタディの実験としては、ホーソン工場で労働者の生産性(作業効率)を調べた『ホーソン実験』やアメリカの哲学者ジョン・デューイ(John Dewey, 1859〜1952)の『(教授法の効果測定のための)8年研究』がある。ジョン・デューイが『8年研究』の結果として導き出した教育の本質及び役割は、『人間の自発的・能動的な成長(向上心)の促進』であった。即ち教育活動とは、ただ勉強の知識を教授するものではなく、生徒・学生の知的好奇心を刺激して自発的な学びの姿勢(意思)を引き出すものなのだという事である。
1924年に、アメリカのウェスタンエレクトリック社のホーソン工場で開始された『ホーソン実験』は、心理学部教授のレスリスバーガーと精神科医師のジョージ・エルトン・メイヨーによって行われたが、ホーソン実験の目的は『作業効率(生産性)・労働意欲を規定する要因』を明らかにすることであった。シカゴに本社を置くウェスタンエレクトリック社は、フレデリック・テイラーの科学的管理法を人事・労務管理に採用している従業員2万9000人という当時の大工場であった。

