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2012年02月01日

[フィールドスタディ(field study)とホーソン工場の研究(ホーソン実験):2]

フィールドスタディ(field study)とホーソン工場の研究(ホーソン実験):2

この項目は、[前回の記事]の続きになります。ホーソン実験がスタートした当初は、『物理的な作業条件』『従業員の作業能率』の関係を調べるために『照明実験・リレー組み立て実験・面接実験・バンク配線作業実験』という四つの実験が実施されたが、この実験結果は『物理的で客観的な作業条件(雇用待遇)』を変化させても従業員の作業効率には殆ど違いが見られないという不思議なものであった。

その実験結果と従業員たちのアンケート調査から、従業員の生産性や労働意欲は『物理的で客観的な作業条件(雇用待遇)』よりもむしろ、『精神的で主観的な職場の人間関係(あるいは個人の仕事観・目的意識)』に左右されるという人間関係論の仮説が導き出された。

『ホーソン実験』のそれぞれの実験結果は以下のようなものになった。

1.照明実験……工場の照明と作業能率の相関関係を調査する実験。工場内の照明を明るくした場合には、それまでよりも作業効率が高くなったのだが、逆に照明を暗くしても従来よりも作業効率が高くなることが分かり、照明を明るくしても必ずしも作業効率が高くなることは確認されなかった。

2.リレー組み立て実験……『賃金・休憩時間(食事時間)・工場内の温度・湿度』などの環境条件を変えながら、6人の女性従業員が製品を組み立てる作業効率がどのように変化するかを調べた実験。この実験ではそれらの労働条件をどのように変更しても、実験が進むにつれて作業効率は高くなった。逆に、途中で元の労働条件に戻す変更をしても、作業効率は時間と共に上昇したため、客観的な労働条件と作業効率の有意な相関は見られなかった。

3.面接実験……延べ21126人にも及ぶ従業員に対して、『仕事に対する意見・感想・要求』などを聞いた面接法の実験。労働者の作業は『その作業に対する満足・不満』という感情と明確に切り離すことはできず、労働者の労働意欲はその個人の『職場での人間関係・仕事に対する適性(納得)』の満足度に大きく左右されていることが分かった。『客観的な労働条件』以上に『主観的な職場の人間関係』のほうが重要なのではないかという仮説が考えられた。

4.バンク配線作業実験……従業員を職種ごとにグループ分けして、バンク(電話交換機の端子)の配線作業を行わせ、その共同作業(協力行動)の成果を調べようとした実験。その結果、それぞれの労働者は自分の持てる力をすべて出し切るのではなく、状況や場面に応じて自発的に自ら労働量を制限(節約)していることが分かり、労働者の『時間当たりの生産量の違い』は労働者の能力上の差異によるものではないという結論になった。更に、『品質検査』では、上司の検査官と労働者との間に『良好な人間関係(信頼感)』があるほうが、より欠陥やミスの少ない製品を製造できることが分かった。

フィールド・スタディの代表とされるホーソン実験では、『従業員同士の仲間意識・集団内での自発的な規範意識』が作業能率に影響を与えるという仮説が実証された。しかし、現代の企業経営や従業員のマネジメントでは、『仕事内容の専門家・知識労働化』により、工場労働とは違った『客観的な労働条件・賃金待遇のインセンティブ』がより強く働くようになったのではないかという反論も出されている。

メイヨーとレスリスバーガーの『ホーソン実験』の成果は、フレデリック・テイラーの能率最優先・従業員の規律的な管理を軸とする『科学的管理法』を反駁したことであり、職場の良好な人間関係や個人の労働観(仕事に価値があるという実感)を重視するホーソン実験の従業員管理法はヒューマニスティックな『人間関係論』として発展することになった。

J.E.メイヨーは、ホーソン実験から導き出される一連の結果と仮説を『産業文明における人間問題(The Human Problems of an Industrial Civilisation)』という著作でまとめており、この著作に見られる人間関係論は、ビジネス思想や労務管理の分野で『人間主義的なパラダイムシフト』を引き起こすこととなった。、現代の職場環境でも、労働には『賃金・キャリア・昇進昇格の経済的対価』だけではなく、『自分の能力が生かせる環境・仕事自体の面白さや自己実現・良好な人間関係の精神的対価』が重視されており、仕事の生産性や意欲と精神的対価が深く関わっていることは確かである。

従業員を管理して成長させる役割を担うマネジャー(管理者)は、会社組織の『技術的側面』『人間的側面』との双方に配慮して、従業員の人間関係や感情問題にも適切に対処できる能力が要請されており、従業員の指導教育という側面においても『共感性と指導力のあるコミュニケーションスキル』の重要性が高まっている状況にある。

posted by ESDV Words Labo at 01:15 | TrackBack(0) | ふ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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