不安テスト(anxiety test)と特性不安・状態不安
心理テストを受けるクライアント(被検者)の『不安状態(不安感情)の強さ・種類』について調べる場合に用いるのが『不安テスト(anxiety test)』である。不安テストの形式は、一般的には与えられた質問(多肢選択式)に応えていくという『質問紙法』であるが、チェックリストをただチェックしていくだけで不安状態を調べられる『チェックリスト形式』のものもある。
古典的な精神分析理論においては、不安状態(不安感情)は『特性不安』と『状態不安』の大きく二つに分けられているが、精神分析の病理学で説明される性格構造と不安の関係については[不安性格(anxious personality)]の項目を参照してみてください。不安を絶えず感じていて、ストレスに対して脆弱性を持つ性格傾向のことを『不安性格(anxious personality)』というが、不安性格は不安神経症の病前性格ともされており、こういった性格特性(パーソナリティ特性)として不可避な不安状態(不安感情)のことを『特性不安』と呼んでいる。
遺伝・気質の要因に幼少期からの経験や記憶が加わることで、変化しにくい性格傾向としての『特性不安』が生まれるが、特性不安に対して精神的ストレスや対人関係の葛藤によって一時的に発生している不安感情のことを『状態不安』と呼んで区別している。
『状態不安』には具体的な原因としてのストレスや人間関係、将来不安などがあることが多いので、その原因を取り除いたり和らげたりすることができれば、不安感を改善していきやすい。『特性不安』のほうは幼少期から積み重ねてきた性格特性(パーソナリティ構造)の一部として慢性的な不安状態が形成されているので、短期間で容易にその不安感情を無くしたり軽減したりすることはできない。
不安テスト(anxiety test)には、『特性不安』を測定するという目的(用途)を持つテストと『状態不安』を測定するという目的(用途)を持つテストとがある。『特性不安』を測定する不安テストには、以下のようなものがある。
J.A.テイラー(J.A.Taylor)の『MAS顕在性不安尺度』
R.B.キャッテル(R.B.Cattell)とI.H.シャイヤー(I.H.Scheier)の『CAS不安測定検査』
『状態不安』を測定する不安テストには、以下のようなものがある。
C.D.スピールバーガー(C.D.Spielberger)の『状態‐特性不安尺度』
M.ツッカーマン(M.Zuckerman)の『感情形容詞チェックリスト』