ウェブとブログの検索

カスタム検索





2006年10月20日

[エスリン・インスティチュート(Esalen Institute, エスリン研究所)でのカウンセリング教育研修][クルト・レヴィンのNTL(National Training Laboratory)]

エスリン・インスティチュート(Esalen Institute, エスリン研究所)

アメリカで1950年代から1960年代にかけてカール・ロジャーズやアブラハム・マズローなどのヒューマニスティック心理学(人間性心理学)が隆盛して、クライエント中心療法やエンカウンター・グループ(“出会い”を重視する集団精神療法)を中心とするカウンセリングブームが湧き起こった。カウンセリング技法の普及や対人援助や人間関係に関する心理学のブーム、自己超越的なニューエイジ思想と関係したトランスパーソナル心理学の影響を受けて誕生した一大セミナー研究施設が、『エスリン・インスティチュート(Esalen Institute)』である。エスリン研究所は、ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント(人間性回復運動)の国際的な中心地となり、心理学の第三勢力と言われる人間性心理学(humanistic psychology)の学会創立にも貢献している。

エスリン・インスティチュートと呼ばれる巨大な複合セミナー(研究研修)施設は1962年に、サンフランシスコ南部のビッグ・サーに建設されたが、人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)やトランスパーソナル心理学、仏教、瞑想技法など東洋思想の合宿研修が精力的に行われた。数万坪にも上る広大な敷地面積を誇るエスリン研究者には、数十棟の大小様々な研修施設や宿泊施設が建設され、会員の健康維持に役立てるプールや温泉なども完備していた。

カウンセリングの面接場面では、人間の主観的な意識世界や共感的な感情生起を重視するという当時の時代背景もあり、エスリン・インスティチュートでは、現在の心理学研究法の主流となっている客観的データを用いて統計学的解析を行う『量的研究』は殆ど行われなかった。定量的なデータを用いる検証可能な量的研究を行わなかったという意味で、エスリン研究所では、エビデンス・ベースドな科学的心理学は発展しなかったが、その代わりに臨床的有効性や人間性の成長に寄与する各種のカウンセリング技法が発展することになった。

エスリン研究所の研究活動や合宿研修によって発展したカウンセリングの理論・技法には、率直な感情と意見を語り受容し合う集団療法の一つである『グループ・エンカウンター』、身体感覚の変化への気づきと精神状態(認知・情動・思考)の改善を結び付けていく『センサリー・アウェアネスやフォーカシング』、言語的コミュニケーションだけでなく身体の運動を活用して心理状態を安定させる『ボディワーク』、今、ここでの気づきを得る為のロールプレイングを重視する『ゲシュタルト療法』などがあります。それ以外にも、仏教や密教、ヨーガ、瞑想、太極拳など東洋思想の実践と研究も意欲的に行われ、東西文化と思想の融合や調和が試行錯誤されることとなった。

ADPCA(Association for the Development of the Person-Centered Approach)

ADPCA(Association for the Development of the Person-Centered Approach)とは、カール・ロジャーズが確立した来談者中心療法(クライエント中心療法)の実験的研究・理論構築・事例研究(カウンセリングの効果研究)などを発展的に実施する中規模の心理学学会であり、1981年にロジャーズの思想とカウンセリングに傾倒し共鳴するデビッド・ケイン(D.J.Cain)を中心に設立された。

1983年から世界各国からクライエント中心療法の研究者・実践家を集める世界大会が開かれていて、会員数は数百人規模で推移しているが、最近はエビデンス・ベースドな認知行動療法や問題解決アプローチの人気に押されて、ロジャーズのクライエント中心療法を心理臨床活動に単独で適用する臨床家は減少している。

NTL(National Training Laboratory)

集団と集団の相互作用や集団に属する個人と個人のコミュニケーションによる相互作用を研究調査し、個人と集団の相互的な行動やコミュニケーションを統御する一般法則を発見しようとする社会心理学の学問領域を『グループ・ダイナミクス(group dynamics:集団力学)』という。集団に所属する個人の行動・態度・発言・意見がどのような影響を受けるのかを考察するグループ・ダイナミクスの研究分野は、『場の理論』を提唱したゲシュタルト心理学者として知られるクルト・レヴィン(Kurt Lewin, 1890-1947)によって意欲的に発展させられてきた。

クルト・レヴィンは心理学研究法として、アクション・リサーチという実践的な方法論を持ち込んだ功績もある。クルト・レヴィンが、集団力学の調査研究を通して確立した『場の理論』とは、遺伝・気質・性格といった個人要因だけでなく、社会環境・対人関係・経済状況といった環境要因に影響を受ける人間の行動を定式化した理論である。場の理論に基づくと、人間の行動は『B=f(P, E)』という関数で公式化することが出来る。B=Behavior(行動)、P=Person(人間・個人要因)、E=Environment(環境要因)である。

社会心理学の研究法の嚆矢となったクルト・レヴィンは、アメリカのコネチカット州で人種差別問題の解決に当たるソーシャルワーカー対象のワークショップ(専門的技能や理論を学ぶ為の教育研修)を開催した。この人種差別問題の解決や対人コミュニケーションの改善を目的とするカウンセリングやエンカウンターのワークショップは、後に総合的な対人関係の改善プログラムやコミュニケーション活性化の実践的技法を研究する公益団体NTL(National Training Laboratory)となった。

NTLのワークショップの研究成果や集団実践によって、人間関係のトレーニング(訓練)や組織開発の任務を実践していこうとする『Tグループ』『ラボラトリー・メソッド』が生み出された。グループ・ダイナミクスの集団観察研究から考案・開発されたTグループ(産業経済分野)とラボラトリー・メソッド(学校教育分野)は集団学習経験が適応される分野の違いに過ぎない。



posted by ESDV Words Labo at 01:35 | TrackBack(0) | え:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。