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2006年10月23日

[T.M.ニューカムのA-B-XモデルとF.ハイダーのP-O-Xモデル]

T.M.ニューカムのA-B-XモデルとF.ハイダーのP-O-Xモデル

オーストリア出身のアメリカの心理学者フリッツ・ハイダー(Fritz Heider, 1896-1988)は、ベルリン大学在学中にヴェルトハイマーやコフカ、ケーラーといったゲシュタルト心理学者の影響を強く受けたが、後に、社会心理学分野の研究に興味を持ち、対人認知(対人評価)やコミュニケーションに関係する認知的バランス理論(認知的均衡理論)や結果の原因を何処に帰属するかによって心的過程(感情・行動)が変化するという帰属理論を提唱した。

社会心理学者としてのフリッツ・ハイダーは、認知的不協和理論で著名なレオン・フェスティンガー(Leon Festinger, 1919-1989年)と共に、認知的斉合性理論(cognitive consistency theories)が構築される過程で大きな貢献をした研究者である。フリッツ・ハイダーの(認知的)バランス理論とは、社会的コミュニケーション場面(二者関係・三者関係)で生じる印象評価(対人評価)を適切に説明する態度理論(attitude theory)である。

認知を構成する二つ以上の要素が矛盾するという『認知的不協和』が起こると心理的(生理的)な不快感が生じるので、人はその認知的不協和を解消(低減)するような認知(解釈・認識)をするようになるというのがフェスティンガーの認知的不協和理論である。例えば、『努力すれば幸福な人生を送れる』という認知と『努力をしても報われないことがある』という認知は矛盾するので認知的不協和が生じるが、一生懸命に努力して資格試験(就職試験)を頑張っている人は前者の認知を肯定するような成功体験や統計情報を信じることで不協和を緩和する。反対に、努力しても生育環境が劣悪であればその努力は無駄だと諦めている人は、後者の認知を肯定するような不条理な失敗談や犯罪統計などを信じることで不協和を解消するのである。認知的不協和は、認知的な不協和の状況や認知を回避する為の認知(行動)を動機付けるので、内発的動機付け(モチベーション)と深い関係があるとされる。

フリッツ・ハイダーの認知的バランス理論も、基本的な理論構成はフェスティンガーと同じであり、複数の認知のバランスが崩れた不均衡状態では、そのバランスを回復させる作用を持つ『対人評価(印象形成・対象評価)の変化』が起こるというものである。ハイダーのバランス理論を簡潔に説明すると、自分の好きな相手が高く評価するものは自分も高く評価しやすく、自分の嫌いな相手が高く評価するものは反対に否定しやすいという『認知的バランスの回復』を示している。バランス理論では、私たちが『対人魅力・事物評価・対人認知』を無意識的に調節する力動を働かせることで、認知のバランス(均衡)を保ってストレス(葛藤)を低減させていることを説明しているのである。

ハイダーの(認知的)バランス理論は、『P-O-Xモデル』を用いて解説されることが多いが、『P=認知の主体者(人), O=他者(関係者), X=事物・対象』を意味している。人(認知者)と他者(関係者)の関係は『情緒関係(センチメント関係)』であり、人と対象(事物)との関係は『単位関係(ユニット関係)』とされるが、認知者は、他者と対象との関係で生じる不均衡の不快感(ストレス)を低減させる『印象・評価・認知のバランス化』を無意識的に行うのである。

P-O-Xモデルでは、『P-O, P-X, O-X』の3つの関係を考えることができ、情緒関係(センチメント関係)は『好意的・非好意的』の対立軸で考え、単位関係(ユニット関係)は『結合・分離』の対立軸で考える。自分が好意を抱く相手が持つ事物の評価に、認知者は事物評価を近づけることがある(嫌いなものを好きになることがある)が、反対に、好意を抱いている相手が自分とは正反対の認知や評価を示した場合には、その相手への対人評価が下がり対人魅力を感じなくなることもある。

フェスティンガーの認知的不協和理論やハイダーのバランス理論と並ぶ社会心理学(感情社会学)の認知的斉合性理論(cognitive consistency theories)の一つに、T.M.ニューカム(T.M.Newcomb)『A-B-Xモデル』がある。人と人との相互作用を研究する社会心理学分野の重要な理論モデルである『A-B-Xモデル』では、人と人あるいは人と事象(話題)の三者関係に働く力学を説明することが出来る。

A-B-Xモデルは、『A=人,B=人 ,X=事象あるいは人 』を意味していて、それぞれの間で形成される関係には、『バランス(balance)・インバランス(imbalance)・アンバランス(unbalance)』の3つの形態の関係があるとされる。それぞれの形態の関係性とそこに働く相互作用を以下に簡単に説明してみたいと思う。

バランス(balance)の関係とは、AとBが好意的な関係にあり、事象(他者)Xに対する評価(態度)も一致している状況である。インバランス(imbalance)の関係とは、AとBは好意的な関係があるが、事象(他者)Xに対する評価(態度)が食い違っている状態である。インバランス関係では、事象(他者)Xに対する評価を自分が変えるか、相手に変えて貰うように働きかける認知的不協和の改善行為が見られやすくなる。アンバランス(unbalance)の関係とは、AとBとが非好意的な関係にある状態なので、事象(他者)Xに対する評価を、相手とは異なる方向に修正しようとするバイアスが働くことがある。

人間関係の内容(対人評価や対人魅力)によって事象の変化は変わってくるが、ニューカムは対人魅力を構成する要素として『特性・好意・類似性・補足性・一致性』があると述べている。特性とは身体的特性や性格特性であり、相手への賞賛として認知される。好意とは自分の利益(快)となる言動であり、相手への好意の返報性を作動させる。類似性とは、行動(態度)や評価の類似性であり、相手へ知覚された支持を生み出すことになる。補足性とは、相手への尊敬や心服を生み出す要因となるもので、自分の短所や欠点を補う相手の要素である。一致性とは共通の意見を持つことであり、自分の意見や価値観を支持してくれる相手には好意(共感)を持つようになる。

posted by ESDV Words Labo at 06:51 | TrackBack(0) | え:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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