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2006年10月23日

[応用行動分析のABAB計画法(ABABデザイン)]

スキナーの応用行動分析のABAB計画法(ABABデザイン)

各種の行動原理と行動変容の技法を用いる『応用行動分析(ABA:Applied Behavior Analysis)』は、自閉症やアスペルガー症候群といった自閉症スペクトラムと呼ばれる広汎性発達障害(PDD:Pervasive Developmental Disorder)の治療・教育に幅広く応用される。しかし、応用行動分析は、心身の発達過程や知的能力、行動制御に障害を抱えた人を対象とした障害児教育や特殊支援教育の福祉教育(医療)活動に限定して利用されるものではなく、人間の行動全般をより適応的かつ有効的にする目的に用いられる。

応用行動分析の歴史は、徹底的行動主義を主張したバラス・スキナー(Burrhus Frederick Skinner, 1904-1990)の創始した行動分析に始まるが、スキナーは行動分析の目的を人間や動物の『行動の予測と制御』に置いた。心理(欲求)を分析・解釈するフロイトの精神分析に対して、スキナーの応用行動分析は、行動を客観的に分析して変容させようとする。

応用行動分析は、人間のあらゆる問題行動や不適応行動を改善(解消)する事を目的とするが、行動変容の手段として独立変数である環境要因を操作することになる。つまり、応用行動分析では、内面的な感情や欲求、動機を変化させるのではなく、外部にある環境要因(独立変数)を変化させることで、行動(従属変数)を適応的(効果的)に変容させるのである。

行動分析の実験的研究では、独立変数である環境(強化子・無条件刺激・条件刺激)を様々に変化させながらどのような行動(従属変数)が生起するかを観察し記述していく。『環境の変化』に対する『行動の変容』を繰り返し観察・記述する実験を行うことで、帰納推測的に一般法則としての行動原理を導出するのである。こういった実験的研究を通して発見された人間の最も基本的な行動原理は、パブロフの犬で知られる『レスポンデント条件付け(古典的条件付け)』とスキナー箱の実験で知られる『オペラント条件付け(道具的条件付け)』というシンプルな条件付けの行動メカニズムに集約される。

応用行動分析は、具体的な行動の変容(問題解決)を効率的に導く科学的技法であるが、発達障害の教育福祉活動への適用以外にも、不適応行動の改善や人間関係の葛藤の緩和、社会経済的な行動の合理化(マーケティングや営業販売戦略への応用)に用いることが可能である。レスポンデント条件付けを応用した行動変容では、生得的な生理学的反射や特定の条件刺激に対する条件反射を利用して行動の変容が行われる。障害児教育では、ベルを鳴らしたり絵柄のついたカードを見せたりして、レスポンデント条件付け(古典的条件付け)を行い、その状況や場面にふさわしい効果的な行動が取れるように行動分析を行っていく。

オペラント条件付けを応用した行動変容では、報酬と罰の法則を用いて、目標とする行動が遂行された場合には、その行動の生起頻度が増える報酬(正の強化子・好子)を与え、非適応的な問題行動が起こった場合には、その行動の生起頻度を減らす罰(負の強化子・嫌子)が与えられる。人間の社会行動や経済活動、対人コミュニケーションの多くが、オペラント条件付けの行動原理に従っており、快(報酬)の刺激である好子(正の強化子)や不快(罰)の刺激である嫌子(負の強化子)を上手く組み合わせて提示することで、目標を達成する為の『自発的な行動(オペラント行動)』を引き出すことが出来る。

例えば、会社で一回遅刻する度に、給料から一定金額を減額するというルールを提示し、更に、一ヶ月間一回も遅刻しなければ一定金額の報酬を与えるというルールを提示すると、その従業員の遅刻行動をオペラント条件付けで減らすことが可能である。相手が送付してくる携帯電話のメールが多すぎて対応に困っている場合にも、相手が送付してくるメールにすぐに返事を出さずに、一日の終わりに一通に返事をまとめて送ることで相手のメール送信の行動を減らすことが出来る。これは、相手が送ってくれる携帯電話メールが、快(報酬)の効果を持つ『正の強化子』となっていることを利用して、『正の強化子(好子)』を排除することで相手の行動頻度を低下させたことを意味している。

オペラント条件付けを用いて行動変容を制御する場合には、『先行刺激(A)・オペラント行動(B)・結果(C)』の三項随伴性を考慮してABC分析を行うことで、より迅速に効果的な行動変容を促すことができる。

応用行動分析の研究活動では、客観的な『行動の観察・記録・報告』と『行動分析(行動療法)の効果分析(評価)』が重要であり、少数のサンプルによる実験結果から応用行動分析の有効性を検証できる研究方法として『ABABデザイン(ABAB計画法)』がある。ABABデザインは、単一の被験者を対象とした実験法で、具体的な目標(治療教育目標)を定めて実施する実証的研究法である。

ABABデザインとは、『ベースライン期(非介入期)・治療介入期・ベースライン期・治療介入期』の4つの期間で、単一被験者の問題行動の生起頻度や応用行動分析の治療効果を検証する実験計画であるが、一度、改善した問題行動や不適応状態を意図的に再現させることで治療効果を確認することに倫理的問題があると指摘されることがある。しかし、行動を生起させる環境要因(強化子)や治療内容を客観的に特定することが可能なので、再現性のある科学的な実験研究法(実験計画)ということが出来るだろう。

posted by ESDV Words Labo at 09:34 | TrackBack(1) | え:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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