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2012年03月29日

[構造派家族療法の不均衡化(unbalancing)とジョイニング]

構造派家族療法の不均衡化(unbalancing)とジョイニング

家族療法(family therapy)では、家族を相互に作用する個人(要素)が集まった一つのシステムと見なして、家族成員のそれぞれが他の成員にどのような影響を与えているのかを分析して、そのシステム的な相互作用を改善していく。家族全体の大きなメインシステムの下位には、『父と子・母と子・兄と弟・姉と妹』のようなサブシステムが仮定されることもあるが、サブシステムの相互的コミュニケーションの内容と影響を分析しながら、家族全体の問題にどう対応していくのかを考えていく。

『家族の問題』について特定の誰かの性格・行動だけに原因があると考えるのではなく、家族成員がそれぞれ他の家族に影響を与え合っているという『システムズ・アプローチ』の視点に立って、コミュニケーションの内容や情緒的な反応をカウンセリングで取り扱っていくのが家族療法の特徴である。

家族療法のシステムズ・アプローチでは、家族の問題(家庭の病理)の原因を『一人の家族』だけに押し付けず、問題を抱えている家族のことを“IP(Identified Patient,患者と見なされている人)”と便宜的に定義して、『家族システムの異常(障害)』を発見してそのシステムを改善することが治療機序になっている。誰か一人だけが病気になったり問題を生み出しているという見方ではなく、『家族関係の偏り・歪みから来る悪循環』を作り出すようなコミュニケーションや関わり方があるという前提に立ち、その家族内部の相互作用による偏り・歪みをできるだけ小さくして正常化していくことを目指すのである。

構造派家族療法のS.ミニューチン(S.Minuchin)は、『ジョイニング(joinning)』という積極参加型の面接技法を重視し、クライエント家族との信頼関係を築きながら、カウンセラーである自分自身が『治療的な家族システム』の一部になろうとしたのである。構造派家族療法のジョイニングとは、自分がクライエント家族の中に入って活動する『関与的観察』であるが、カール・ロジャーズの来談者中心療法(クライエント中心療法)のラポール(相互的信頼関係)と似たような働きが期待されている。構造派家族療法のカウンセラーは、クライエント家族のシステムのルールや相互作用を経験的に理解することを優先するのであり、自分が『家族のサブメンバー』として信頼されるために積極的なジョイニングでの介入を試みるのである。

家族成員から好意的に協力して貰えるような信頼関係を築くことで、家族システム全体の『悪循環』を断ち切る契機を見出しやすくするのがジョイニングの役割だが、家族の『円環的なシステム』を正常化していくためには、家族成員それぞれに『自分の言動が他の家族に与える好ましくない影響(負のシステム的な作用)』に気づいてもらう必要がある。一般的には家族療法のカウンセラーは、家族成員それぞれと『等しい距離感』を保って平等・中立な対応を心がけることになるが、敢えて特定の家族成員やサブグループに偏った意見を言ったり肩入れしたりする技法のことを『不均衡化(unbalancing)』という。

システムズ・アプローチを応用した家族療法で、治療的介入と心理的援助を効果的に行うには、家族システムの分析・理解を進めていかなければならないのだが、家族のコミュニケーションがパターン化して何の変化も見られなくなったような時には、分析・理解・介入だけではなく『不均衡化』の技法を用いて、“いつもとは違うコミュニケーションのパターン”を生み出すことが有効である。家族療法における不均衡化は、家族成員の誰かに賛同してみたりその人の意見だけを集中的に取り上げたりすることで、『家族間に成立している非機能的な均衡(いつまでも変わらない安定化したパターン)』を意図的に崩す効果がある。

『子どもを叱責したりバカにしたりしてばかりいる親』『両親に攻撃的な反抗ばかりしている子ども』のクライエント(問題を抱えた家族)がいる場合に、カウンセラーが“親だけの意見”にわざと賛成してみたり“子どもの立場”だけに共感してみせたりすることで、『不均衡化の作用』が働き親子間のコミュニケーションに新たな流れ・変化のきっかけが見えてくることがある。家族療法の不均衡化とは、問題状況や家族の苦悩を維持している悪循環を切断するための『きっかけ作り・争点の明確化』であるが、その最終的な目的は『意味のない非機能的な均衡』を突き崩して、『意味のある機能的な均衡(バランス)』を再構築するという事にある。



posted by ESDV Words Labo at 22:07 | TrackBack(0) | こ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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