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2006年10月26日

[黄疸(jaundice, icterus)と肝疾患:肝臓の生理学的機能と障害]

黄疸(jaundice, icterus)と肝疾患:肝臓の生理学的機能と障害

黄疸(jaundice, icterus)とは、血液中に含まれる胆汁色素であるビリルビンの濃度が高まって、皮膚・眼球結膜(白目)・角膜などの組織・器官にビリルビン色素が侵入し、黄色や緑黄色に見える状態のことである。黄疸と似た症状として、柑橘類(ミカンや甘夏)や緑黄色野菜(ニンジンやカボチャ)の大量摂取(過剰摂取)によって、皮膚が黄色く見えてしまう「カロチン色素の沈着」があるが、こちらは黄疸と違って特別な疾患の兆候ではない。

ニンジンやカボチャ、ホウレン草、ブロッコリー、サツマイモなどの緑黄色野菜やミカン、甘夏などの果物に含まれるβ‐カロチンは、一般的に抗酸化作用や抗がん作用が期待できる。しかし、アメリカやフィンランドの臨床試験では、一日に30mg以上の過剰摂取では、反対に肺がんの疾病リスク(発病リスク)が上昇したという調査報告もあり、β‐カロチンは取れば取るほど効果があるわけではなく、抗がん作用に限っては一日の摂取量に適量と制限があると考えられている。

緑がかった黄色の色素であるビリルビンは、体内を循環して古くなり不要になった赤血球が脾臓で破壊される時に製造され、血流に乗って肝臓へと運搬されていく。肝臓に運ばれたビリルビンは、通常、肝臓から分泌される胆汁の成分となって、小腸・大腸で食物の消化を助けることになる。ビリルビンが、肝臓から十分に胆汁として排出されないと、血液中のビリルビン濃度が過度に高くなって黄疸(おうだん)の症状が発症してくる。正常に肝臓で胆汁が製造され、その中の成分としてビリルビンが溶け込んでいれば黄疸の症状は見られず、排出される便に黄色がかったビリルビンの色素が表れることになる。

最大の身体器官である肝臓の機能は、『栄養(グリコーゲン)の貯蔵・老廃物(有害物)の排泄機能・胆汁の消化機能・化学物質生成による生命維持機能(血液凝固因子・アルブミン・コレステロールなどの製造)』である。肝臓は糖をグリコーゲンとして貯蔵し、血糖値が低下した時のエネルギー源を確保している。身体にとって不要で有害な老廃物を排出する役割をするが、有害物質(老廃物)は分解されて血液中や胆汁に排出され、血液中の有害物質は腎臓から尿に濾過されて排泄される。胆汁に含まれる老廃物は、大腸から便となって排泄される他、薬剤の有毒物質を化学反応させて代謝を促進し排出する役割も果たしている。

肝臓は、心臓や腸と直接血管でつながっており、肝臓と腸をつなぐ重要な血管を『門脈』と呼ぶ。腸から吸収された栄養素と有害物質は門脈を通って肝臓へと運ばれ、肝臓において適切な処理(グリコーゲンへ変化・胆汁と共に排出)が行われる。心臓から『肝動脈』を通って、肝臓の化学的活動(コレステロールやアルブミンの生成)や代謝に必要な酸素が供給されている。

代表的な肝疾患には、肝細胞自体が機能障害を起こして、有害物質を排出できなくなったり健康維持に必要な化学物質を生成できなくなるB型肝炎C型肝炎肝硬変といった病気がある。また、肝細胞自体に異常や障害がなくても胆道閉塞を引き起こす癌や胆石によって、胆汁の分泌障害が起こり黄疸の症状を示すことがある。

胆汁に含まれる緑黄色のビリルビンの正常な血中濃度は、『0.1〜1.0mg/ml』であり、黄疸が出ている可能性を疑う診断基準としての目安は『3.0mg/ml』以上である。老朽化した赤血球の破壊によって生じる黄色(緑黄色)色素のビリルビンは、胆汁に含まれ通常、便と一緒に排泄されるが、胆汁への『ビリルビン排泄障害』によって黄疸が発症する。一般的に、肝炎や肝がんを始めとする何らかの肝臓疾患によって、肝細胞が炎症や繊維化を起こし、ビリルビンの排泄障害から黄疸の症状を呈すことになる。胆管(胆道)が胆石や癌で塞がれて、ビリルビンを含む胆汁を腸内に排出できない場合にも同様に黄疸が起こる。

新生児や乳児に黄疸症状が見られる場合には、赤血球の大量生成と過剰破壊によって、肝臓の処理能力を超える大量のビリルビンが発生する『高ビリルビン血症』が疑われる。

黄疸の確定診断には、各種の血液検査と画像診断法の医学検査が用いられるが、治療法は肝臓疾患の薬物療法や手術に準じるが、胆管が胆石などによって塞がれている場合には、内視鏡手術や外科手術を実施して胆管の流れを再開させることになる。黄疸の軽度の症状としては、皮膚のかゆみや倦怠感、疲労感、頭痛などがあり、黄疸や原因となっている肝疾患が悪化して重症になると、発熱や昏睡、肝臓部分の激痛などの深刻な症状を示すことがある。



ラベル:医学 栄養学
posted by ESDV Words Labo at 05:58 | TrackBack(0) | お:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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