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2006年11月05日

[MSW(Medical Social Worker, 医療ソーシャルワーカー)とPSW(Psychiatric Social Worker, 精神保健福祉士):社会福祉事業の活動領域の拡大と医療分野との連携]

MSW(Medical Social Worker, 医療ソーシャルワーカー)とPSW(Psychiatric Social Worker, 精神保健福祉士):社会福祉事業の活動領域の拡大と医療分野との連携

ソーシャルワーカー(social worker)とは、教育・保健医療・介護・生活保護・児童福祉・障害者支援・産業福祉・司法矯正などの社会福祉事業に従事する専門家や公務員、事業者の総称である。専門職としてのソーシャルワーカーの学術的基盤には、乳幼児・少年・各種障害者・高齢者・経済的困窮者などの社会的弱者を援助する技術や制度を研究する社会福祉学がある。しかし、現代社会では、社会福祉事業の支援と適用を必要とする分野や人々が増えているので、社会福祉学のみでなく自分がソーシャルワークを実施する活動領域(専門領域)に合わせて、臨床心理学や身体医学、精神医学、介護学、行政政策、法律学などの幅広い教養と理解を持つことが期待されている。

19世紀イギリスの慈善組織協会に起源を持つソーシャルワーカーは、専門的な社会福祉援助技術と社会保障制度の知識を活用して、社会福祉サービスの適用やコンサルティング(コーディネイト, カウンセリング)などの対人援助が必要な社会的弱者(制度的弱者)を支援する社会福祉事業に従事する。活動する専門分野に関わらず、ソーシャルワーカーが実践すべき社会福祉援助技術は、以下のように分類することが出来る。

□直接援助技術
1.ケースワーク……社会福祉制度の政策的な支援(生活環境の改善・経済的な援助)や臨床心理学的な対人援助(カウンセリング・心理療法)を必要とする社会的困窮者の個別事例(ケース)に合わせた直接的な援助。
2.グループワーク……集団精神療法(集団面接)やエンカウンター・グループを用いて行う多人数を対象とした心理学的援助。共同の集団生活(老人養護施設・障害者福祉施設)を前提とする心身障害者などを対象とした集団介護、集団を対象とする福祉レクリエーション、リハビリテーション、デイケア(通院・通所による社会復帰・社会参加のためのリハビリテーション)などの集団援助技術。
3.ケアワーク……要介護の高齢者や心身障害者の介護・ケアを行う直接援助技術。

□間接援助技術
1.社会福祉施設の管理運営(調査・評価・アドバイス)
2.ケアマネジメント(ケアプランの作成・実施・評価・修正のサイクル)
3.コミュニティ援助(高齢者・障害者・子供の健康とケアを増進する人間関係や組織活動の発展とそれに基づいた地域社会の再生支援)
4.社会福祉調査と社会福祉政策の提言(専門領域における統計データの収集と分析。社会状況の現実と人々の福祉サービスのニーズなど客観的根拠を踏まえた社会福祉政策の提言)

福祉事業や社会保障にコミットするソーシャルワークの領域では、専門化と細分化が進行しており、日本では国家資格を有する専門家のソーシャルワーカーと公務員として社会福祉活動に従事するソーシャルワーカーとが存在している。日本国において、国家資格制度と法的な位置づけを持つソーシャルワーカーとしては、社会福祉分野(と保健医療分野)における『社会福祉士(Certified Social Worker)』、精神保健分野における『精神保健福祉士(PSW:Psychiatric Social Worker)』がある。

いずれも、医師や看護師などのような業務独占資格ではなく名称独占資格であるが、その社会的認知度と業務上の評価、社会的な需要(ニーズ)は日増しに高くなっている。社会福祉や心理臨床の分野で実施する援助や技術には、専門知識の裏づけや一定期間の専門的トレーニングが必要であるが、社会一般の対人援助活動やボランティアとの境界線を明瞭にし難いために名称独占資格に留まっている。

社会福祉や保健福祉のソーシャルワーク、臨床心理学的な対人援助(カウンセリングや心理療法)は、既存の家族・親族による介護や民間療法的な支援、宗教的なセラピー、人生相談や占い業などと業務領域やクライエント層がオーバーラップする部分があるので、業務独占資格を認定する為に必要な『業務内容の定義の困難』がある。

カウンセリングという用語自体が『臨床心理学の専門用語』としての地位を失いつつあり、エステ業界や美容・化粧品業界、健康食品・サプリメント業界、経営コンサルティング、マーケティング、人生相談などでも一般的に用いられているために、カウンセリングという用語に専門性の認知を持たせることは現状では非常に難しいと言わざるを得ない。

国家資格で認定される社会福祉士の身分の根拠法は『社会福祉士及び介護福祉士法』であり、精神保健福祉士の身分の根拠法は1997年(1998年施行)に成立した『精神保健福祉法』である。日本では保健医療分野を専門として、医療福祉支援とコンサルティング(専門的知識や有益な福祉サービスの情報提供)、コーディネート(専門家間の紹介・斡旋業務)を行う『医療ソーシャルワーカー(MSW:Medical Social Worker)』の法的位置づけはないので、実質的に、社会福祉士と精神保健福祉士が医療ソーシャルワーカーの業務をこなす場面が増えている。

保健・医療・社会福祉・教育・介護・司法・産業など広範囲の領域での活躍が期待されているという意味で、現在の社会福祉士は非常に横断性の強い包括的な国家資格であるということが出来るが、職業領域の『専門性の認知』が弱く業務独占ではないため、必ずしも職場や給与面では恵まれているとは言えない状況がある。専門性の認知と活動領域の特定という意味では、精神障害者の保健と福祉を対象として専門的な社会復帰の支援(相談)と医療対処の補助を行う精神保健福祉士(PSW)のほうが、社会福祉士よりも専門領域が明瞭であるという指摘がある。

MSW(Medical Social Worker, 医療ソーシャルワーカー)とは、医療分野における薬物療法や外科手術、理学療法(リハビリテーション)で十分にカバーできない心理社会的な問題やストレスをカバーして支援するのが業務である。医療ソーシャルワーカーは、健康保険制度や社会福祉制度などの社会資源を有効活用し、必要な専門的情報を患者に与えながら患者や患者の家族を包括的に支援することになる。具体的には、患者の心理的問題(精神的ストレスや病気・治療への恐怖)のケアを行い、患者を看護する家族の心労やストレスを緩和するカウンセリングを実施したりする。

それ以外にも、医療費の負担や生活費の不足といった経済生活上の相談にも応じ、医学的治療が必要な患者・家族が経済的困窮に陥るようであれば、その困窮を緩和できるような社会福祉制度の紹介や公的保険制度の適用を進めていく。医師・看護士・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)などの医療チームやコメディカル・スタッフ(医療関連スタッフ)と相互的に意思疎通して協力しながら、患者や患者家族の医学的治療(リハビリテーション)だけではなく、心理社会的サポートの充実を図っていくのがMSW(医療ソーシャルワーカー)の仕事である。



posted by ESDV Words Labo at 14:46 | TrackBack(0) | え:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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