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2012年05月05日

輻輳説(theory of convergence)と発達心理学

輻輳説(theory of convergence)と発達心理学

『輻輳(ふくそう,convergence)』とは、物が1ヶ所に集中して混雑する状態のことを意味する概念であり、一般的には電話回線やインターネット回線(TCP/IP網)などで、通信要求過多により通信が成立しにくくなっている現象のことを指す通信分野の用語として使われることが多い。輻輳の発生を回避する技術や輻輳状態からスピーディーに回復させる通信技術のことを『輻輳制御(congestion control)』といい、輻輳状態が悪化して通信効率が非常に悪くなったり通信不能に陥るような状態のことを『輻輳崩壊』と呼んでいる。

この項目では、心理学特に発達心理学の分野で用いられる専門用語(テクニカルターム)としての『輻輳説(theory of convergence)』について簡単に説明するが、輻輳説は人間の性格や才能、能力(知能)が何によって決定されるのかという発達要因の議論から生まれたものである。人間の性格や能力が遺伝要因だけによって決定されるという仮説を『遺伝説(遺伝子決定論)』、人間の性格や能力が環境要因・学習要因だけによって決定されるという仮説を『環境説(環境決定論)』というが、『輻輳説』はそれらの中間的な折衷案としての特徴を持つ。

遺伝説は『生得的要因・遺伝的要素』だけを過大に評価しており、環境説は『後天的要因・経験的要素』だけを過大に評価しているという問題があり、どちらもかなり偏った仮説であり意見であるとして、現在では『単純な遺伝説・環境説』のみを主張している発達心理学・性格心理学の研究者はほとんどいない。

種子が発芽して枝葉を伸ばして花を咲かせる植物は、その生長(発達)のほぼ全てが遺伝子によって決定されており、自分の意志で学習できず環境を調整できない植物の生長に関しては、概ね遺伝説が正しいと解釈できる。だが、人間の発達はより複雑であり自由意志による選択(学習)の影響も大きいので、遺伝要因だけでその発達や資質、将来の可能性を全て説明することは不可能である。

それと同時に、行動主義心理学(行動科学)のジョン・ワトソンのように『私に赤ちゃんを与えて貰えれば環境と学習を制御することで、思い通りにその赤ちゃんの将来の進路を規定することができる』と考えるのも極端であり、人間の性格や能力、適性はある程度は『遺伝要因・生得的要因』の影響を受けているはずである。どんな人間でも環境を整えて一生懸命に勉強しさえすれば同じだけの成績や結果を出せるわけではなく、それぞれの個人の遺伝要因や先天的な気質・資質によって、その分野に向いているか向いていないかの違いはやはりあると考えるのが妥当だろう。

『氏か育ちか論争(遺伝か環境か論争)』に関して、ドイツの心理学者W.シュテルン(W.Stern)が提案したのが人間の性格形成や能力発達(知能発達)には遺伝要因(生得的要素)と環境要因(後天的要素)の双方が相互作用しながら影響を与えているという『輻輳説(theory of convergence)』である。輻輳説では先天的な遺伝要因と後天的な環境要因(学習要因)が共に相乗作用(相互作用)を発揮することで、人間の心身の発達(能力・適性の発達)が段階的に規定されていくというように考えることになるが、現在の発達心理学ではこの輻輳説がより現実妥当性のある仮説として支持されている。

偏差値の高い大学を卒業した両親を持つ子どもは、そうでない子どもに比べて有意に高学歴になりやすいという統計的な傾向はあるが、それは先天的な知能にまつわる『先天的要因(遺伝要因)』が優れているという可能性だけでなく、両親が共に子の教育・受験に強い関心があり勉強を教えて上げられることや家にたくさんの本・百科事典があるような知的欲求を刺激する家庭環境が準備されていることなど『後天的要因(環境要因)』の影響も無視することはできないのである。

posted by ESDV Words Labo at 07:07 | TrackBack(0) | ふ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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