不定愁訴(indefinite complaint)と自律神経失調症・更年期障害:5
この記事は、[前回の項目]の続きになります。 男女の性別役割分担のジェンダー(社会的性差)が成り立ちにくくなり、女性の社会進出・就労状況が進展する中で、『女性の家事育児の負担』だけは以前と余り変わらないということも、ストレス性疾患と相関した不定愁訴の要因になっている。『男性の労働負担の増加・賃金水準の低下(失業リスクの高まり)』なども男性の精神的ストレス増加の要因になっており、男女の性別を問わずこういった『社会経済的要因(家庭や生活、仕事を維持するための負担感・緊張感)』も不定愁訴で訴えられる心身の不調と関係している。
何となく身体・精神の調子が悪いという不定愁訴は、『はっきりした病気ではないから・こんな小さなことで相談すると悪いから・気の持ちようで調子が悪いのだろう』ということで、病院には行きづらいという人も多いが、不定愁訴をもたらす他の病気の早期発見をするためにも、とりあえず一回は病院で医師にきちんと相談してみたほうが良い。医師によっては不定愁訴を適当に聞き流して、まともな診療や対応をしてくれないこともあり、患者の診療の動機づけが弱くなってしまう問題はあるが、『丁寧に共感的に話を聞いてくれる・必要な医学的検査をしてくれる・対症療法の薬を出して様子を見てくれる』といった当たりが良い医師を見分ける目安になるだろう。
不定愁訴の不調や悩みを持っている患者で一番つらいのは、『大袈裟に言っているだけではないか・単なるわがままや甘えではないか・わざと病気になりたがっているのではないか・詐病や仮病なのではないか』という医師や周囲の人たちの疑いのまなざしと無理解である。そういった疑いを無くして親身になって話を聞いてもらえるだけでも、『ストレス性疾患としての不定愁訴』であれば軽減してしまうことも多いのである。それは、共感的な理解をしてもらって自分のつらさを肯定してもらうことが、クライエント中心療法のような自然な『カウンセリング効果(感情解放のカタルシス効果・仲間に支持されるバディ効果)』をもたらしているからである。
自律神経失調症にせよ更年期障害にせよ心身症にせよ、不定愁訴が訴えられている問題を改善していくためには、まず『医師・家族・周囲の人たちの理解と協力』が不可欠なのであり、そういった安定した治療環境と人間関係の上に『薬物療法・カウンセリング(心理療法)』を付け加えていくという形になる。不定愁訴の悩みや訴えは、心療内科・精神科で問題にされることが多いが、内科・レディスクリニック(婦人科)でも対応してくれるところはあるので、自分と相性の良い医師(親身になってくれて納得できる対応を考えてくれるような医師)を粘り強く探すことも大切だろう。
不定愁訴の治療には、前述した抗不安薬・睡眠薬・ホルモン剤等の薬物治療だけではなく、自己否定的・悲観的な認知(物事の受け止め方)を修正していく認知行動療法(CBT)や睡眠周期を正常化していく行動療法・光療法などが行われることもある。西洋医学の薬物療法やカウンセリング的支援以外にも、『漢方薬・鍼灸・マッサージ・アロマセラピー・自律訓練法』などが合わせて行われることもあり、特に漢方薬は『漢方医の見立て(証の判断)・処方』が自分の体質・状態に合っていれば、中長期での改善効果をかなり期待することができる。
不定愁訴(自律神経失調症)に処方される代表的な漢方薬は『苓桂朮甘湯・半夏白朮天麻湯(めまい・立ちくらみ),柴胡加龍骨牡蠣湯・桂枝加竜骨牡蛎湯(不安感・抑うつ感・睡眠障害),加味逍遙散(月経前症候群・冷え性・不安感・睡眠障害)』などが知られているが、具体的にどの症状(問題)に対してどんな漢方薬を調合・処方するかは、患者の証(病態)を実際に見ている漢方医の経験・判断によって変わってくる。

