ウェブとブログの検索

カスタム検索





2012年06月19日

A.W.コームズの不適正なパーソナリティ(inadequate personality)

A.W.コームズの不適正なパーソナリティ(inadequate personality)

人間関係における援助行動や臨床的な対人援助技術を研究したアメリカの心理学者A.W.コームズ(A.W.Combs)は、性格心理学の分野にも強い関心を示していた。A.W.コームズは心理学の調査研究法を『開放系心理学(open system psychologies)』『閉鎖系心理学(close system psychologies)』とに分類したが、カウンセリングの分野に目的を定めない自由度の高い開放系心理学を応用したことでも知られる。

S.フロイトの精神分析やカール・ロジャーズのクライエント中心療法も『人格の成熟・心理的な成長・無意識の洞察・意味の発見』など抽象的で物語的な目標を掲げており、相互の絶えざる人間関係によって精神状態を向上させようとする開放系心理学の心理療法(カウンセリング)に位置づけることができる。A.W.コームズはその個人を特徴づける一貫性と連続性のある行動・感情・思考・態度・人間関係のパターンとして“パーソナリティ(personality)・人格構造”を定義して、そのパーソナリティと社会適応(問題解決能力)との相関を研究していた。

コームズは心理的な問題や社会環境に対する不適応、人間関係におけるトラブルの原因の一つとして、『パーソナリティの傾向性の偏り・歪み』を想定していたが、コームズがパーソナリティ研究(人格構造分析)をしていた時期は、まだ『パーソナリティ障害(人格障害)』の概念や診断基準が普及していない時期だった。そのため、コームズの定義した『不適正なパーソナリティ(inadequate personality)』というのは、社会環境や仕事状況、対人関係に適応できない『パーソナリティ障害(personality disorder)』の先駆的な障害概念となっており、なぜその個人が自分で問題状況を解決できないのかを理解するための図式(見立ての道具)を提供している。

コームズのいう『不適正なパーソナリティ(inadequate personality)』というのは、現代精神医学における“クラスターAの不可解性・クラスターBの反社会性・クラスターCの非社会性”を乱雑にまとめたようなパーソナリティ障害の総体であり、『不適正なパーソナリティ』自体を一つの障害概念や診断基準として用いることには限界がある。しかし、『社会生活・人間関係・感情統制・家庭内不和の諸問題』がなぜ起こっているのかを大まかに理解することには当時役立った概念であり、『自分の判断に自信が持てない・漠然とした不安感がいつもある・人生を生き抜くだけの意欲がない』などの心理的な不適応感と不適正なパーソナリティの間に深いつながりがあると考えられていた。

A.W.コームズが考案した不適正なパーソナリティの特徴は、以下のようなものである。

1.自分の存在・能力・未来に対して『悲観的な認知』が非常に強い。

2.『新たな経験・人間関係』に対して自分が開かれておらず、経験した事柄を人生の次の課題に応用することができない。

3.自分自身を客観視することができず、自己と他者との間に阻隔感(断絶感)があるので、他者と共感的な人間関係を築くことができない。



posted by ESDV Words Labo at 21:07 | TrackBack(0) | こ:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック