オペラント条件づけの負の強化(negative reinforcement)・負の練習(negative practice):1
行動主義心理学(行動科学, behavioral psychology)とは『行動の生起・発生頻度・消失(消去)のメカニズム』を研究する分野であり、適応的な行動を獲得したり非適応的な行動を消失させたりするための方法論を明らかにしている。行動主義心理学の中心的な理論は、『レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)』と『オペラント条件づけ(道具的条件づけ)』である。
I.P.パヴロフ(Ivan Petrovich Pavlov, 1849-1936)やJ・B・ワトソン(J.B.Watson, 1878-1958)が研究したレスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)は、生物学的な無条件反射を応用した『条件反射』を理論化したものであり、刺激(S)に対する反応(R)を研究するので『S-R理論(S-R結合)』と呼ばれることもある。
無条件刺激の餌(食物)と無条件反射の唾液分泌のS-R結合を、条件刺激のベルの音によって条件反射としての唾液が出るようにした『パヴロフの犬の実験』が有名である。『無条件刺激(餌)』を与える前に『条件刺激(ベルの音)』を繰り返し呈示することで、ベルの音を聞くだけで餌が貰えるというイメージ(期待)が誘発されて、すぐに唾液が出るようになるというのが『条件反射のレスポンデント条件づけ』の基本形態であり、それ以外の人間の様々な行動にも応用される研究が進められた。
C.L.ハル(C.L.Hull, 1884-1952)やB.F.スキナー(Burrhus Frederick Skinner, 1904-1990)が研究したオペラント条件づけ(道具的条件づけ)は、『飴と鞭の理論』と呼ばれることもあるように、“報酬”と“罰”によって人間の行動の生起頻度の変化を説明しようとする理論である。オペラント条件づけでは、報酬となる刺激のことを『正の強化子』といい、罰になる刺激のことを『負の強化子』というが、一般的に正の強化子を与えるとその行動頻度は増加して、負の強化子を与えるとその行動頻度が減少するという変化が見られる。
そのため、オペラント条件づけ(道具的条件づけ)では、正・負いずれかの強化子を与えることで対象とする行動を増やしたり減らしたりできるという考え方になり、強化子の呈示や刺激によって特定の行動を増減させることを『強化(reinforcement)』と呼んでいるのである。