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2012年06月19日

オペラント条件づけの負の強化(negative reinforcement)・負の練習(negative practice):3

オペラント条件づけの負の強化(negative reinforcement)・負の練習(negative practice):3

この項目は、[前回の記事]の続きの内容になっています。K.ダンラップ(K.Dunlap)が考案した行動療法としての『負の練習(negative practice)』は、問題となっている症状の現れとしての行動や不適応行動を敢えて繰り返しやらせることによって、その行動を制御できる感覚を習得させようとする技法である。苦手意識を持っている対人行動や恥ずかしさ(劣等感)を感じている症状、緊張感に襲われる行動をわざと繰り返し人前でやってみることで、その行動に付随している緊張感・不安感が和らぎやすくなり、自分の意識・意図でその行動をコントロールできるような実感を得ることができるとされる。

『負の練習(negative practice)』というのは、恐怖・不安・緊張を克服するために敢えて苦手な行動や恥ずかしい症状を再現して繰り返させるといういわゆる『ショック療法』でもあるが、創始者のK.ダンラップは人前で手が振るえたり、緊張して声が上手くだせないという患者に対して、この負の練習を“メンタルリハーサル(心理的な予行練習)”のようにして何度も行わせたという。

『手が振るえてはいけない・緊張して声がでないとどうしよう』といった事前の予期不安を低下させるためには、敢えてわざと手を振るえさせたいだけ振るわせてみたり、人前で話すことを想定してわざと発言を間違ったりどもったりしてみることで、『手が振るえても大したことはない・緊張して声が振るえても言い直せばいい』というリラックス感を得やすくなる。負の練習は、行動療法における『逆説療法・ショック療法』として知られる暴露療法(フラッディング, flooding)や系統的脱感作法のメカニズムにも類似している。

クライエントが『不安・恐怖・緊張を感じている対象(行動)』に敢えて暴露することで、その不快で苦痛な刺激に馴れさせていき、逆説的にその不安感や恐怖感を和らげたりコントロールできるようにしたりするのが暴露療法(エクスポージャー法)であり、負の練習の治療機序も『苦手意識を持っている不適応行動』を繰り返し再現して練習することで、その緊張感・劣等感を改善していけるとするものである。

K.ダンラップは『過度の緊張と手の振るえ・吃音症(どもり)・指しゃぶり(爪かみ)や抜毛症の習癖』に対してこの『負の練習』を用いた治療を行なったが、A.J.イェーツや梅津、久野、角張といった心理臨床家もこの負の練習によって『チック(不随意運動として出現する急な発声・吃音・手足のけいれん・顔をしかめる動作など)』を治療したという症例がある。

チック症(tic)というのは、『幼児期・児童期』に発症しやすい不随意性の精神神経障害・運動障害であり、APA(米国精神医学会)のDSM-IV-TRやWHO(世界保健機関)のICD-10では『トゥレット障害・トゥレット症候群』として診断基準が記載されているものである。

posted by ESDV Words Labo at 21:13 | TrackBack(0) | お:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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