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2006年11月25日

[基礎心理学(basic psychology)と応用心理学(applied psychology)]

基礎心理学(basic psychology)と応用心理学(applied psychology)

人間の行動・心理・人格・知能・対人関係など広汎な心理現象を研究対象とする心理学は、『基礎心理学(basic psychology)』『応用心理学(applied psychology)』に大きく分類することが出来る。基礎心理学は、理論心理学(theoretical psychology)や一般心理学(general psychology)とも言われることがあるが、主に実験法と観察法、心理統計学といった手法を用いて、人間の行動を制御する一般法則や心理の機序(メカニズム)を説明する一般理論を定立しようとする心理学分野である。

基礎心理学は、ヴィルヘルム・ヴント(Wilhelm Max Wundt, 1832-1920)が創始した実験心理学(experimental psychology)と同一の分野として取り扱われることもあるが、一般的には、実験心理学の下位分野である知覚心理学(感覚心理学)や学習心理学、行動主義心理学(行動科学)などを包含したものとして定義されている。実験心理学の父と呼称されるW.ヴントは、『生理学的心理学要綱(Grundzuge der psysiologischen Psychologie)』(1874)という主要著作があることからも分かるように、心理学者であると同時に生理学者であった。

ヴントは自然科学のような客観的で実証的な科学としての心理学を志向したが、内観法(introspection)を用いて自分の意識的経験を観察したように主観的な連合主義の影響を完全には脱しきれていなかった。ウェーバーの法則やフェヒナーの法則といった人間の知覚(感覚)の機能を一般法則として記述しようとした精神物理学の影響も受けているが、ヴントとその高弟で意識心理学(consciousness psychology)を創始したE.B.ティチェナー(E.B.Tichener, 1867-1927)は、人間の心が複数の要素から構成されるという前提に立つ構成主義(structuralism)の心理学者に分類される。

W.ヴントは、1879年、ライプチヒ大学に歴史上初めての心理学研究室を開設して、心理学を自然科学に近似した経験主義的(実証主義的)な科学分野へと発展させた偉大な功績を持つ。W.ヴントは、人間の色覚に赤・緑・青の3要素があるという『ヤング=ヘルムホルツの三色説』を唱えた生理学者ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(Hermann von Helmholtz, 1821-1894)の助手として働いたこともある。

基礎心理学は、実験心理学を中核として人間の心理現象や行動傾向に関する実証主義的な一般理論を解明しようとする学問分野であるが、実験心理学以外にも、『発達心理学・認知心理学・性格心理学・異常心理学・社会心理学』などが基礎心理学に分類されている。過去に、ニコ・ティンバーゲンやコンラッド・ローレンツの行ったエソロジー(動物行動学・比較行動学)について解説したが、動物の行動や生態を比較検討して、動物の行動一般に共通する意味や理論を研究するエソロジーも基礎心理学に含められることがある。

基礎心理学(理論心理学)と対置される『応用心理学(applied psychology)』というのは、基礎心理学の研究活動から得られた『理論・法則・知見』を実際の社会生活や問題解決、人間関係に役立てようとする心理学分野のことである。応用心理学が適用される主要分野は『産業・教育・臨床・福祉・司法』であるが、それらの諸分野を始めとして、社会に存在するあらゆる領域や現象、集団、制度に対して応用心理学の研究調査を行うことが出来る。

上記のように応用心理学の研究活動の対象となる分野は広範多岐に渡っているが、現在では、基礎心理学の知見や理論を応用する心理学分野というよりは、教育心理学・臨床心理学・産業心理学・犯罪心理学といった形で個別的な応用心理学としての独立性と固有性を強めてきている。

ここでは、全ての応用心理学の概要に触れることは出来ないが、教育心理学・産業心理学・臨床心理学についてだけ簡単に説明しておきたい。教育心理学では、人間の知能・人格の発達過程と教育活動(教育指導・外部環境)との相互作用を理論的に研究しながら、人間の人格形成・知識獲得(学力向上)・社会適応に有効な教育学的アプローチ(指導・環境・人間関係)を実践的に探求していく。

産業心理学では、生産性と効率性の高い組織人事や職場のメンタルヘルスを維持する対人関係、産業能率性を向上させる職場環境などを研究対象にしながら、経済合理性(利益・効率・成長)と精神の健康性、仕事のやりがい(仕事から得られる生きる実感)を実現する方略を模索する。臨床心理学では、精神疾患や対人関係のストレス、心理的な苦悩を抱えた人たちを心理学的に援助(支援)する知識と技術、経験を修得することを目的にして、『心理療法・心理アセスメント・異常心理学(精神病理学)』の実践的な研究と臨床を進めていく。

現在では、上記した分野以外にも、災害心理学やスポーツ心理学、栄養心理学、経営心理学、学校心理学など更に様々な分野における問題対応的な応用心理学が増えてきている。また、各種の応用心理学の研究実践では、心理学以外の隣接諸分野との連携を通した学際的研究や共同調査などの重要性が高まっており、基礎心理学と応用心理学の直列的な結びつきだけで心理学の系統を整理することが難しくなっている現状がある。



ラベル:心理学 研究法
posted by ESDV Words Labo at 05:42 | TrackBack(0) | お:心理学キーワード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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